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林望 謹訳 源氏物語(1) 桐壷、帚木、空蝉

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謹訳 源氏物語全10巻完結セット
 kindleで『源氏』を読んでいます。さてどこまで続くのやら。第1巻は桐壺、帚木、空蝉、夕顔、若紫です。

 源氏物語は、帝の皇子でイケメンで教養も高いというスーパースターの「色好み」を描いた王朝文学、という程度の知識しかありません。高校の古文の教科書で習ったことはあるのですが、小説として読んだのは初めて。教科書に載せるくらいだから、さぞかし「もののあはれ」たっぷりの、情緒的な物語だと思っていたのですが、読んでビックリ。早い話が、光源氏の女色の物語ではないですか!。

 「箒木」に、あの有名な「雨夜の品定め」が出てきます。光源氏、頭中将、左馬頭、藤式部丞のプレイボー4人による女性談義です。4人とも高等遊民?みたいなものですから、それぞれの女性遍歴を披露しながら、こういう女性は一級品だ、ああいう女性は下等だとか勝手なことを論議しています。軽く聞き流して(斜め読みして)、源氏と空蝉の恋模様に移ると、眠気が吹っ飛びます(毎晩、寝る前に読んでます、笑)。
 「桐壷」で誕生した源氏が、次の第2帖「帚木」で17歳となって早くも色恋沙汰ですから呆れます。

【空蝉】
 方違いとかで、源氏は伊予守の屋敷を訪れるんですが、その屋敷で、伊予介の妻(空蝉)を見初める話しです。伊予介は老人ですが、妻は後妻で源氏よりもいくつか年上。見初めるといっても実際に顔を見たわけではなく、評判を聞いて忍んでゆくわけです。「雨夜の品定め」で、女性は中流が一番という結論を聞いたので、中流の女性に興味を引かれたようです。
 よその家に行って、その家の主の妻と「情けを通じ」ようというのですから、源氏のモラルというものはどうなっているのでしょうね。平安時代と現代のモラルを比較しても仕方がないんでしょうが...。源氏は17歳で、葵の上という妻がいるのですが、どうも奥さんをほっぽり出して、アチコチに出没しているようです。まぁ「光源氏」ですからモテるんでしょう。
 
 源氏は寝所へしのんでゆきます。空蝉が「中将(女房)は何処へ行ったの」というので、

中将をお召しになりましたゆえ、わたくし、近衛の中将めが、参上いたしました。ええ、あなたを人知れずお慕い申しておりました、今その思いが叶った心地がいたします

とかなんとか言って空蝉の寝所に忍び込みます。なにが「あなたを人知れずお慕い申しておりました」だ、口からでまかせです。

 源氏は強引にモノにした空蝉が忘れられず、次はどうやって会おうかと算段をめぐらします。空蝉はというと、罪の意識に悩まされるわけではなく(多少はあった?)、源氏のような高貴な身分の男性と恋に落ちても、いずれは捨てられる運命だと悩み、もう金輪際会うものか、と決心を固めます。とは思うものの、本心では源氏が忘れられず「胸が痛み、思いは千々に乱れる」わけです。
 で源氏はどうしたかというと、空蝉の弟・小君というのを自分の召使に貰い受けて(皇族だから無理が効く)、空蝉との連絡役に仕立てます。こういう辺りは、実にマメです。

 二度目に伊予守の屋敷を訪れて、源氏は伊予守の娘と碁をうっている空蝉をはじめ「覗き見」します。この「覗き見」というのは、次の「夕顔」でも「若紫」でもやっていますから、源氏の得意技です。で、今回も寝所に忍び込むわけですが、源氏の気配を察した空蝉はそっと逃げ出して、そこにいたのは空蝉ではなく昼間、碁をうっていた紀伊介の娘。

やや、これは別人だ、とさすがに源氏も気付いた。これには驚き呆れ、また〈しまった〉とも思った。〈しかし、まさかここで人違いであったなどと、まごつくところを見せては男がすたるというものだ、……

さすがというか、節操がないというか...。

こうたびたび方違えにかこつけて、このお邸にまいりましたのも、じつは、あなたとこうして逢瀬を遂げたいと、その一心からだったのです

またも口からでまかせ。ということで、空蝉の代わりにこの娘と「情けをかわす」わけです。帰り際に、空蝉が脱いだ薄絹の単衣をちゃっかりと持ち出します。
 
 よその家に遊びに行って。その家の女主人、その義理の娘とまで、ですから呆れます。 空蝉さん、よくぞ源氏を振ったものです。

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