「丸谷才一編・花柳小説傑作選」 丸谷才一編
講談社 講談社文芸文庫 2013年03月06日刊 1,600円+税
丸谷才一はこの本を編集したものの出版前に亡くなっている。この本は12人の作家の19編の短編を集めたもの。作家は吉行淳之介、瀬戸内晴美、丹羽文雄、里見弴、志賀直哉、永井荷風など錚々たるメンバーが並んでいる。瀬戸内晴美の「てっせん」がよかった。恥ずかしながらてっせんが花の名前であることを知らなかった。この本の中で一番だったのは島村洋子の「一九二一年・梅雨 稲葉正武」と、「一九四一年・春 稲葉正武」の2編。タイトルからは全く思いも及ばないが、かの「阿部定」の物語。稲葉正武は彼女の面倒を見た女衒の名前である。