真っ先にテーブルについた赤いチャイナドレス女性は、背が高くも妖艶な感じのする。結構、僕のタイプだった。「あら、お兄さん。ここ初めてでしょ?」 早くも女性の手が僕の膝に伸びてきた。「は、はい」 僕の酔いは一気に冷める。その女性「上玉、入りました!」 隣にいた同級生が「気がついた?」と、僕に耳打ちした。「彼女がテツヤだよ」 「ナナフシ、あんたもよく化けたわね?」 「テッちゃんほどじゃないよ。でも、にわか仕込みだってことバレたみたいだね」 「なにも気取る事ないのにさ。私は昔と変わらないあんたが好き。外見はお金でどうかなるけど、心の清濁はそうはいかないわね」 彼女の源氏名は七海。グラスの中の氷を指でかき混ぜながら、あの夏の日と同じほほ笑みを浮かべた。 (完) 来週から、もう1作コント「天の川」を連載します。引き続きご愛読ください。
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