乾いた洗濯物をひとつひとつゆっくりと、皺までていねいにのばして、小さな膝の上でたたむ妻の姿が見えた。九月に入りようやく涼しくなって寝付きやすくなったためか、早く寝入ったぶん朝の五時過ぎに目を覚ますときょうも晴天らしく、なにもこんなに早くから洗濯物をたたむこともあるまい、と声をかけそうになった。
半年前に亡くなった老妻の、五十数年変わらぬ姿だったが、いまさらこのような夢を見るのも、私自身が自分の記憶をたたみはじめにかかっているからかもしれない、という気がして、しばらく横になったまま、室内が窓から明けていくのを、ぼんやり見ていた。