ぶ、ぶ厚過ぎるぜ!! ページ数700、それも上下二段。価格も¥2,600とは、まさにBIGサイズ。 しかし、読み始めると止まらない。ちなみにワタクシの場合、二週間で読み終わってしまった。もっと読みたかったぜ!! と、思わず心の中で叫ぶこと間違いなしの超面白本なのだ。 歴史的な力道山と木村政彦の試合は、結果だけなら誰でもが知っているように、力道山のK.O勝ち。 プロレス・ファンを自認するワタクシも、取り立てて騒ぐことなく、その結果をごく当たり前に受け入れていた。 現在、この試合の様子は不完全な状態ながら(編集されている)、YouTobeで観ることが可能で、最初はごく普通のプロレスの試合が、途中から荒れ、不穏な空気を漂わせつつ、力道山の猛スパートで決着するのだが、猛スパートがけっこうえげつなく、プロレスの範疇を逸脱しているように見えなくもない。 本書はその試合から遡り、天才と詠われた木村政彦の柔道時代のエピソードを描きつつ、封印された<裏日本柔道史>をひも解く。近代的な講道館柔道と、高専柔道(寝技に特化した柔道)の確執から、抹殺された高専柔道の流れの中に木村政彦もいた。 最強の称号を得ながら、高専柔道というアウトサイダーゆえ、王道を歩くことを拒否され、妻の病気を治す薬を買う金を得るためにプロ柔道をやり、やがてプロレス界へ身を投じることになる。 プロレスは台本のあるショーである。とは、おおっぴらには言いたくはないものの、その事実は、今や誰でもが知る事実。しかし、力道山と木村政彦の試合が行われた1954年当時はどうだろう? 一般の人は100%真剣勝負だと思っていたはずだし、国民的英雄の力道山が、実は朝鮮出身者だとは誰も知らなかった。 あの試合も、どちらが勝つかの筋書きはあった。それにもかかわらず、力道山はおきて破りの攻撃を木村に浴びせ、K.Oしてしまう。いくら天才で最強の木村とて、安心し切っているところに、ガツン! と、本気の一撃を受けたらひとたまりもあるまい。マットに崩れ落ちてゆくしかないのだ。 そうとはいえ、木村自身にも慢心していたと指摘されてもしかたない部分が多過ぎた。 前日まで深酒をしていたとか、明らかに練習不足だったというのでは、同情の余地はない。力道山との間にきな臭い匂いは漂い過ぎるくらい漂っていた。なのに、万が一を想定しなかったのは、いったいどうしたことか? この本を読むと、最強とかそうじゃないとかの前に、残念ながら、木村は負けるべくして負けたのだ。 帰るべき祖国を失った力道山は、どんな手を使ってでも、ここ日本でのし上がってゆくしかなかった。その違い。 大山倍達が出てきたり、ヤクザとのかかわりや、木村のいたずら好きな一面、そして、ブラジルに渡り、グレイシー一族の長であるエリオとの死闘など、読んでいて引き込まれるエピソード満載のこの本、¥2.600は安いでしょう!!!
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