安土城を建てた棟梁親子を軸にした歴史小説です。 これまでの作品を読んでも、史実に即しながらも名もなき職人が歴史上の人物に関わり、自らの功績を後世に残す、そんな物語を山本さんは書いています。 信長の夢は、天下一の棟梁父子に託された。天に聳える五重の天主を建てよ! 巨大な安土城築城を命じられた岡部又右衛門と以俊は、無理難題を形にするため、前代未聞の大プロジェクトに挑む。信長の野望と大工の意地、情熱、創意工夫――すべてのみこんで完成した未曾有の建造物の真相に迫る松本清張賞受賞作。 (出版社HPより) 史実以外全て創作といってもいいのではないでしょうか。 熱田神宮の宮大工だった岡部又右衛門は桶狭間の戦いに赴く織田信長と出会い、信長とともに各地で築城に携わります。そして命ぜられたのが安土城築城でした。 完全に「プロジェクトX」の世界です。 信長の「ざっくりした」城のイメージ。木材で造る巨大建築(のために木曾まで行って巨木を調達)。集められた京都や宇治の棟梁たちとの軋轢。親子の確執。領地を追われた六角による妨害工作。 職人魂が燃え盛ります。熱いなー。 5層7階、日本で初の天主を持ち、華麗にして絢爛と伝えられる安土城ですが、建造されてからわずか6年という短い時間で焼失してしまったため絵画などがほとんどといっていいほど残っていないそうです。 それだけに想像力を働かせる余地があったと思います。 歴史小説にありがちな戦闘シーンがほとんどないのに読んでいて手に汗握る小説でした。 公開中の映画『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』も安土城絡みで観てみたいです。
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