7点
「日本疾病管理予防研究所」・・・感染症について研究する怪しげな施設。
そこに経歴を詐称して就職した、気弱で小学生にも見える童顔な森田彼岸。
寄生虫と結婚したとまで言われる、寄生虫研究の一子、派手な格好で感染症の
フィールドワークをする美女(うつくし)、いつも穏やかな微笑みを浮かべているが
研究の為には手段を選ばない所長・桜、のんびりおっとりお茶を飲むのが趣味な通称カビ爺・荒木、
カビ爺の研究を実際には行っている正義の熱血漢蘇我(通称ジャスコ)など、
研究所には一癖も二癖もある人間ばかり。
しかし、彼らは、突然暴力的になる奇病、ゴミ屋敷をつくりだしてしまう奇病・・・などの、
発生に気が付きそれらを次々に解決していく。
しかし、あまりの手際よさを不自然に感じる彼岸は・・・。
漫画チックに個性的過ぎる登場人物達と、全体的なノリの軽さ。
ホラーのライトノベルという印象。
牧野修は、SF、モダンホラー、SFホラー、オカルトホラー、スラップスティックSF、
そして今回のようなライトなノリのホラーと、いろいろな傾向のSF・ホラーを書いていて、
そのかき分けも上手く、完成度も高いものが多い器用な作家。
今回も、そういう意味では、個性的過ぎる登場人物は面白いし生き生きと描かれ、
また、作品に出てくる奇病もエグかったり、グロかったり、いい感じでおぞましく、
ライトノベル系ホラーとしてそれなりの完成度になっている。
ただ、1つ1つのエピソードは面白いけど、全体的なストーリーの盛り上がりにはかけ、
中途半端感も残る。
この本、新しくできた竹書房レーベル「タソガレ文庫」の一冊。
「ホラーとミステリーの融合」を謳っていて、ラインナップを見ると、ライトノベル系で、
対象となる読者は20代くらいと若いんじゃないかと。
で、その辺を意識し過ぎて中途半端になったんじゃないかなーって感じも。
いろいろな毒を孕んでいる話なんだけど、そのどれもがあまり突っ込まれずに、
毒々しさ禍々しさが出すぎるのを抑え、ソフトに表面だけがサラっと書かれている。
ブラックなユーモアや、禍々しい要素を強く出せば、もっと面白くなった気がするのに。
子供だまし的に感じる、あまりにも安易だなぁと思える部分もちょっとあったし。
それなりには面白かったけど、もっと面白くなったはず・・・という物足りない感・勿体ない感が残る話だった。
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