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ビジョルド【五神教シリーズ】第3部『影の王国』〜ブックレビュー〜

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 お久しぶりです。小説の紹介です。ロイス・マクマスター・ビジョルドの【五神教シリーズ】第3部、『影の王国』を読みました。前の2作品とは毛並みが違う印象でした。
影の王国 上 (創元推理文庫)

影の王国 上 (創元推理文庫)

  • 作者: ロイス・マクマスター・ビジョルド
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/11/21
  • メディア: 文庫
影の王国 下 (創元推理文庫)

影の王国 下 (創元推理文庫)

  • 作者: ロイス・マクマスター・ビジョルド
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/11/21
  • メディア: 文庫
 第1部『チャリオンの影』と第2部『影の棲む城』は時代的にも地理的にも近い地平の作品で、共通する登場人物も出てきたのですが、今回は全く別の地域の物語でした。訳者あとがきにもありましたが、今作は地図も具体的な説明もないようなので、五神教という共通点以外は全く別物といった感じです。  舞台はウィールドという森の国。元々、森の神を信仰していたところへ外の大国に攻め入られて、五神教に取り込まれた地域という設定です。国家元首たる聖王が危篤となる中、第三王子が殺害されたという事件から物語は始まります。主人公イングレイは国璽尚書の遣いで現地へ赴き、容疑者でありヒロインのレディ・イジャダと出会います。  と、ここからは物語の大半が移動、移動、移動。落ち着く暇がないという印象です。欧米のファンタジー小説ではよくあることですが、重点が議論や策謀に置かれていて、バトル的なダイナミックさがない小説でした。ビジョルド女史にしてみれば、いつものことですが。  ビジョルドの小説ですごいのは、架空世界の宗教の中で、神学論を戦わせるところでしょう。この世界に住む人々の五神教に基づく死生観、異教となった森の民による禁断の儀式に対する処罰、まさに死に直面した人に訪れる奇跡。そしてこの世界では神が人間に触れ、世界に介入してくるということが、稀にあるということ。  このあたりを嘘っぽくなく描くところが、素晴らしいですね。かなり刺激になります。  この本を読むのにかなり時間をかけてしまったので、次はちょっとライトな小説に手を出そうかと思っています。

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