この作品集の中の一番長く2/5ほどを占めるこの中篇だけ読んで(貸出期限切れで)返却した。他のも面白そうだったのに、残念。
作者を別のキャロル(ジョナサン・キャロル)と間違えて借りた。全くの別人だったが、作風は近いかもしれない。キャリアは長くたくさんの作品を書いており翻訳も結構出ているのだが、知らなかった。
11歳の少女を13歳の少女の3人組が誘拐、監禁するという異様な設定。これには戦慄させられる。緊迫感のある描写が非常にリアルで迫力がある。被害に合ういたいけな少女は勿論だが、その母親の、子供が居なくなってうろたえ、惑乱し、怯え、憔悴していく心理描写が実に生々しい。
一方の加害少女の狂気に落ちていく内面もまた恐ろしい。さらには冤罪にはまる青年の心理も。どのキャラも立っていてストーリーテリングの技が冴える。果たして無事に救出されるのか、先の読めない展開でページを繰る手が加速される。
蛇足)翻訳小説の中で初めて「ディスる」という言葉を目撃した。
とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 ---ジョイス・キャロル・オーツ傑作選
- 作者: ジョイス・キャロル・オーツ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/02/15
- メディア: 単行本