戦時下イギリスのとある村で、親子ほど年上の名士と結婚した女性が車のセールスマンとの駆け落ちらしき形跡を残して姿を消した。数日後ふたりの遺体が浜に打ち上げられたが、身投げによる心中かと思われた事件には不審な点が。語り手の「私」こと村の開業医ルーク・クロックスリーは、警察に協力するヘンリ・メリヴェール卿とともに真相を探り始める……
ジョン・ディクスン・カーもしくはカーター・ディクスン(同一人物)は、毎回どうにかして読者を楽しませようとするサービス精神過剰なところが好きです。章の終わりが衝撃的なひとことで締めくくるですとか、どこかに入ってくる若い男女のラブコメ要素ですとか。この本で一番しょうもなくて一番楽しかったのは、足を骨折しているH・M卿が電動車椅子で平和な村を暴走してえらい騒ぎになるシーンです。そういう「ちょっとやり過ぎでは」という過剰さがよろしいのですが、事件の真相に至る過程もしつこく何度も何度もひっくり返されるお話です。
この手がかりはここにちゃんと書いてある、という照合が解決編できっちりされているので、該当箇所を読み返すほどうまいこと隠してある感を強くするしかありません。こういう方向で騙しに来たな、と唸りながら読むしかありません。
もうひとつ唸らされるのは、1943年発表の本書に見られる戦争の影です。灯火管制やラジオのニュース、そして結末でちらりと見える戦時下の現実にも注目ですよ。
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カーター・ディクスン『貴婦人として死す』(創元推理文庫)
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