【2014年~世界の真実/長谷川慶太郎/13年7月初版】
当たりの1冊です。付箋(読書メモ)だらけになりました。1冊の本で付箋が3つぐらいしかないスカ本もあれば、知らない情報がぎっしり詰まった、ジューシーな本もあります。長谷川慶太郎85歳、ジューシーです。
最新の国際情勢が200pほどでさらっと理解できます。読み易くどのページにも濃い目の情報が満載です。あまりに面白かったので、最近控えていたウイスキーを出してきて、干しブドウを食べながら読みました。
飲んだのはグレンリベット12、カミュVSOPです。ブランデーの4大ブランド、レミー、マーテル、オタール、カミュのVSOPクラスの中では一番カミュがまろやかです。ストレートで飲むならカミュかなぁ。ブドウの皮の渋みが感じられるオタールもわりと好きですが。
前置きはこのくらいにして、早速の読書メモを。
<シェールガスの単価>
米国エネルギー省によると、埋蔵量は人類が400年間使っても大丈夫と推定。米国の実績では発電コストは1キロワットあたり6円程度。ちなみに日本の太陽光発電の買い取り価格は42円。シェールガスの7倍でコスト面で勝負にならない。
IEAの推定では2015年にシェールガス産出量が、ロシアの天然ガス産出量を超え、2017年にはシェールオイルを含めた米国の石油産出量がサウジを抜く。米国は世界一のエネルギー資源大国の座につく。すでに天然ガスが最も安い国は米国。なぜか。米国内には250万キロものパイプラインがある。これは貴重なインフラであり、シェールガスを開発したら、それにつなげばいい。
<シェールガスで慌てるロシア>
原油価格が80ドル以下だと、ロシアは外貨獲得が厳しくなる。ロシアは国内の産業が成熟してないので、外貨が稼げなければ国民生活に支障がでてくる。
ロシアの輸出は65%を天然貸ガスと原油が占める。主な輸出先は欧州。2010年までは天然ガス価格を毎年引き上げてきた。2011年以降は逆に下げている。米国がナイジェリアのガスを輸入しなくなり、それが欧州に流れ込み、ロシアのガスと競合したからだ。いまやロシアの窮地を救う得意先は日本しかない。
<メタンハイドレード>
日本近海には、国内で使うガスの100年分がある。現在日本の電力料金は原発による発電を入れた平均で1キロワット20数円だが、メタンハイドレードが実用化されれば、10年後には5円程度になると推計される。
この開発は早いと見込まれる。理由は安倍政権がメタンハイドレード商業化のために、日本政策投資銀行に1兆円の融資枠を設けたこと(これまでは政府の投資額はたった200億円)、民間企業が必死になってきていること。
<円高は賃高>
米国のGMの労働者の平均賃金が2万7千ドル。トヨタの一般従業員の平均賃金が5万8千ドル(1ドル=100円計算)。日本経済にとって国際競争力を増すには円安しかない。
<なぜロナルドレーガンは地震が起こって3日後に三陸沖に着いたか>
ゲーツ国防長官と、胡錦濤 の会談で、「共産党が人民解放軍をコントロールする文民統制は崩壊している」ことが判明し、オバマに報告。オバマは危機的状況を理解し第7艦隊の増強を図り、3月9日に第7艦隊にとって2隻目の原子力空母となるロナルドレーガンを日本に向かわせた。3.11は向かっている途中で起きた。
<オスプレイが沖縄にある理由>
オスプレイは非常に脚の長い飛行機で、沖縄から四川省まで無着陸で往復できる。中国が崩壊したとき、中国全土に散らばっているアメリカ人居住者の救出が可能だ。それがオスプレイが沖縄にある理由。
<中国不動産価格の下落は暴動に>
人民日報によると、中国における不動産価格の在庫は金額にして約60兆円。GDPの11%にあたる。不動産価格が下がり、金融機関は多額の不良債権を抱える。中国の銀行は4大銀行も地方も経営基盤の弱いところはいつ倒産してもおかしくない状況。しかし中国政府としては地方の金融機関を倒産させられない。預金保護制度を備えてないから、金融機関の倒産により預金者は預けたカネをすべて失う。そうなったら暴動は必至だ。ことはその地方で終わらず、全国で取り付け騒ぎが発生し、恐慌⇒大暴動につながる。
<日本での報道>
中国経済はものすごく悪いが、悪い情報はできるだけ抑えて外に出ないように中国政府は気をつけている。特に大事なのは日本への報道である。日本からの投資がなくなったら、中国経済はもたない。
<習近平指導部の敵は文革派>
共産党指導部は中国の内政をコントロールできない状態に落ち込んでいる。反習近平の勢力が北朝鮮を握っていて、それに習近平は指一本触れられない。
反習近平の勢力とは、共青団、太子党といった派閥に関係が無い。毛沢東を信奉し、文化大革命を支持する文革派のことである。文革派は長く少数派であったが、失業者や就職できない大卒者が増え勢いを盛り返した。
<反日デモ収束の理由>
もとは失業者のガス抜きとして中国政府はこれを利用し、1200円の日当まで払って参加者を動員した。なぜ9月19日を境に反日デモが抑えられたか。デモの参加者の中に、毛沢東の肖像画を掲げるものがいたからだ。間違えば文革派の反政府デモに転じる恐れが生じ、デモを禁止した。
<文革派の支持層>
有力な支持層は人民解放軍。幹部はすべて文革派。人民解放軍からすれば、共産党は建国当時のような共産革命のための組織ではなくなっている。
胡錦濤は人民解放軍を党の軍隊から国の軍隊にしようとしたが、当然のごとく軍は国軍化に反対した。鄧小平以降、共産党が進める改革解放路線は、人民解放軍にとって自分たちの存在意義を否定することに他ならない。
<人民解放軍 瀋陽軍区>
「3つの50万トン」という言葉がある。石炭、石油、穀物を50万トンずつ、中国が北朝鮮に無償で提供するという援助契約だ。そのなかで一番大事なのが原油の50万トンであり、北朝鮮は中国経由で原油の供給を受けている。
北朝鮮のパイプラインのバルブを握っているのは、北京ではなく人民解放軍の瀋陽軍区である。したがって正確には、「中国の人民解放軍・瀋陽軍区が北朝鮮をコントロールしている」というべき。実は人民解放軍の7つの大軍区のうちで、瀋陽軍区が突出して強い力をもっている。陸軍の戦闘部隊の70%が瀋陽軍区に集中し、戦力の充実している部隊が置かれている。人民解放軍のエリートともいえる瀋陽軍区が先軍政治を求め、文革派を支持して、北京の中央政府と対立している。反乱を起すと中央政府は対抗できない。唯一瀋陽軍区に足りないのは核兵器だ。核兵器の貯蔵施設は成都軍区にある。
<北朝鮮の核開発の真相>
核兵器開発をやらせているのは瀋陽軍区。中央政府と対立したときに、北朝鮮の核兵器を北京に向かって打ち込むぞと脅すため。2012年4月の核ミサイル発射実験は、温家宝への報復。薄熙来が失脚したことへの報復。中国の権力闘争というと、太子党と共青団の派閥抗争と理解されることが多いが、 薄熙来は文革派の有力者だった。薄熙来の常務委員就任は文革派にとって大きな目標だった。文革派の有力な支持層は人民解放軍だが、それがつぶされたことに腹を立てたのだ。とくに瀋陽軍区内の大連市長や遼寧省長を務めた薄熙来は「瀋陽軍区のエージェント」といわれるほど、つながりが深かった。
<中国の3つのジレンマ>
北朝鮮制裁を拒否すれば、国際社会で孤立し、その結果欧米との貿易に支障がでるようなら経済状況が悪化する。
(中国の輸出の3分の1が欧州、25%が米国、20%が日本)それは暴動を招き、体制を崩壊させるかもしれない。したがって北京は国際社会に同調するしかない。
しかし国際社会に同調し北朝鮮に制裁を行なうと、瀋陽軍区が反旗を翻す恐れがある。
もうひとつのジレンマは地方との関係だ。地方経済にとって大事なのは日本からの投資だ。日本から資本が入らないともたない。尖閣問題で日本からの投資がトーンダウンすると、一番最初に中央政府に反発するのは地方政府だ。
<中国崩壊のシナリオ>
人民解放軍と、不満を持つ暴動参加者(毛沢東の時代の方がみんなが貧乏で平等だった。そのほうがいい)が手を組むシナリオより確率の高いシナリオは、内戦による崩壊だ。人民解放軍の7つの軍区は一定の独立性をもって、軍事行政もやり、国防体制を維持しているが、瀋陽軍区が突出した存在だ。
北朝鮮が核兵器開発に成功し、瀋陽軍区がその核兵器を握れば、これにかなう軍事力は中国国内に無い。瀋陽軍区は共産党に対して反乱を起せば、東北三省を独立させるだろう。三省だけで人口は2億人を超える。ひとつ独立すれば、他の軍区も一斉に独立宣言するに違いない。1920年代のはじめに軍閥が割拠したのと同じ状態が復活する。あのときと同じように軍区同士が領土争いを始めれば内戦となる。最終的には、中華人民共和国が崩壊して、中華民国連邦になると著者は推測している。
7人の中国人兄弟は大海原を飲み込み
7000年の間 共同体が統治する
R.E.Mで7 chinese brothers♪ 84年のReckoningから。ヒットした玉手箱の1つ前ですね。
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