p.69ー ロック・クラシック:大成功 昔からの友人で音楽仲間で、当時CBSの社長だったヨッヘン・ロイシュナーがヴュルツベルクで行われたあるイベントに私を招待した。CBSがソニーグループになってソニーミュージックに名称変更した直後だった。イベントの後、二人で居心地の良いワイン酒場で楽しくおしゃべりをした。私たちがやっていたバンド「Mercy Four」は数年前に、ここヴュルツベルクで、北バイエルン・ビート音楽コンクールで優勝していたから、昔の思い出に浸るのはごく自然なことだった。残念ながら、その晩は、サイン集めの可愛い女の子たちが私たちのテーブルにやってくることはなかったが・・。 当然ペーターと彼の国際的オペラ界での彗星のような上昇も話題になった。あんなに若い歌手にあらゆる世界的な大きなオペラハウスから出演依頼が山のように来るなんてことがかつてあっただろうか。途方もなくきついワーグナーの重い英雄的な役をこなす優れたオペラ歌手は、当時も今現在もほんとに少ししか存在しない。 ヨッヘンはペーターが青春時代にロックンロールのバンドで歌っていたことを知っていた。そして、美味しいフランスワインのせいもあって、冗談半分ながら、ポップス、あるいは、ロックミュージックの分野のレコードをペーターで録音しようという、突拍子もない考えが生まれた。私たちは兄が肯定的な反応をすることをほぼ確信していた。彼は違うことをするのが好きだった。私はレナート・バーンスタインのことばを思い浮かべた。彼はこう言っていた。「人がどの音楽をやるかはどうでも良いことだ。良い音楽と悪い音楽があるだけだ」そこで、私たちはこの冒険的な考えを深めていった。ペーターの独特で比類ない声に合う歌についてもじっくりと検討した。 翌日、帰宅してペーターにこの危険な考えを伝えた。彼の最初の反応は非常に肯定的だった。すぐに自宅の音楽室に行った。ペーターはマイクを握って、二人の心に自然に浮かんだ数曲を歌ってみた。ヨッヘンとペーターと私はその後ふさわしいタイトルを考え、たくさんの案の中から、最終的に「ペーター・ホフマン、ロック・クラシックス」に決めた。
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目次
ヨッヘン・ロイシュナーによる序文
はじめに
ロンドン:魔弾の射手
バイロイト:ヴォルフガング・ワーグナー
パルジファル:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ロリオ:ヴィッコ・フォン・ビューロウ
リヒャルト・ワーグナー:映画
シェーンロイト:城館
ペーターと広告
コルシカ:帆走
モスクワ:ローエングリン
ロック・クラシック:大成功