囲炉裏端
「気になるな~」
「ダメですよ、おじいさん」
「でも、最近、カイ子、みるみる痩せてると思わんか」
「・・・確かに」
「痩せだしたのは、ワシたちにあんな立派な絹の着物や絹の寝巻なんかをくれるようになってからだぞ」
「・・・そうですね」
「カイ子が心配じゃ」
「ダメです。カイ子が絶対あの襖を開けてはいけないと言ってるんですから」
「でもな~・・・ばあさんや、これは絶対『鶴の恩返し』に似たことがこの家で起きているとしか思えんのだよ」
「・・・」
「ワシは桑畑で鳥に食われそうになっていた蚕を助けた。と、その日の夕方、娘がこの家にやってきた。ワシたちに夢にまで見た娘ができた・・・よく働くし、あんな立派な絹の織物をくれる・・・」
「・・・ほんと幸せな毎日です・・・」
「だからじゃよ・・・カイ子は自分の繭から糸を紡ぎ出して、ワシたちに恩返ししようとしている・・・でもあのままじゃ、カイ子は死んでしまう・・・」
「・・・」
「絹の着物なんていらん。カイ子がず~とワシらのそばにいてくれればそれでいい・・・」
「・・・でも、あの襖を開けたら、カイ子もあの鶴のように・・・」
「・・・大丈夫、襖は開けん、まずは天井裏から様子を見てみる・・・」
・・・・・・・・・・・・
「どうでした、おじいさん」
「カイ子、絹製品をネットで注文してた・・・次は絹のシーツが来る・・・時間指定で12時から14時」
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