休憩から中々帰ってこない同僚は、居なくなる前に不可解な言葉を残していた。言葉を辿るうちに重大な”可能性"を目の当たりにし―(「心変わり」)。あらゆる要素で詰まった、全19編の万華鏡。
あえてなのかなぁ。じっとりと後を引くような話が散りばめられていた。
恩田さんのノンシリーズ短編集は『朝日のようにさわやかに』以来の5年ぶりとのこと。実に様々な世界を魅せてくれました。なんてことのない日常の風景が、段々と変容していく不気味さを醸しだす「心変わり」や、その対となる「思い違い」、手紙の主を知った時と今後の不穏さを予感させる「忠告」、白昼夢のような現実の世界に酔った「二人でお茶を」などなど、好きなお話あったなー。
毎度短編集を読んでは思うけど、もっとこの話を中編や長編でがっつり読んでみたいと思うものもちらほら。そういえば、今年読んだ長編新作『夜の底は柔らかな幻』はここ数年の個人的ヒットでした。どちらかといえば恩田さんの本は長編が好きです。もしかしたら今後の長編の要素が、この短編集のなかに隠れているかも…と想像しつつ面白く読んだ。