以前、このブログで、
お茶の水大学の哲学科の名誉教授、
土屋賢二先生がたまらなく好きと書いたけれど、
これは、その土屋先生が、
なぜ哲学の道に進む事になったのか、
その理由が綴られた自伝的な本。
長年の土屋先生のファンである、
私のような者にしたら、
この本を読みながら、胸のときめきが止められない。
いや、ときめきとはちょっと違うか、
とにかく、いつも人をおちょくったようなエッセイばかりの先生が、
初めてまとまってご自身の事を書かれたのだから、
興味を持てないわけがない。
まず出だしは、
東大の入学式に出席するために、
先生とご両親が、
岡山から13時間もかけて上京してきたところから始まる。
けれど、その入学式も、
先生らしい笑えるエピソードで、
結局、出席できずに終わる(笑)。
そして始まる大学生活。
最初は漠然と、官僚になろうと決めていた先生が、
寮生活や、ドストエフスキーに出会って、
次第に哲学に興味を持つ過程が描かれる。
先生の生い立ちについても、
結構なページ数で書かれているけれど、
「この環境があの先生を作ったのか」と思うと、
興味深くて、夢中で読んでしまう。
小学校しか出ていないご両親の願いは、
子どもが自分の力で生きていくという事だけで、
東大に入れようとか、そんな気持ちは
まるでなかった事が分かる。
お父さんとお母さんの、
家庭での在り方も、めっちゃ面白い。
詳しくは書かないけれど、
あの時代には、珍しい事だったんじゃないかなぁ。
大学時代、今や伝説となった、
「東大駒場寮」で暮らしていたという先生。
駒場寮については、
多くのかたが、文章その他で描かれているけれど、
この本を読むと、
それらの事が、「やはり本当だったんだ」と再確認できる、
凄い状態だったようだ(笑)。
駒場寮の記録としても、
貴重な一冊になると思う。
私のような者が、
先生について分かったような事を言うのは、
とても恥ずかしいけれど、
ほんの少しだけ、
先生を知る事ができたのが嬉しい。
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