電子ブックが進めば本自体は衰退し出版および関連業界にとっては痛手となるだろうが、それも時代の流れと解釈していしまっていいのだろうか。
この先例として、音楽のデジタル化がある。レコードの時代、今にも傷つきそうな丸い盤に針を載せ畳の部屋で針飛びが起きないように、できるだけおとなしく音楽を聞いていた時代から、CDになって小さくなると共に、透き通る音で家庭ばかりか外でも同じ盤を持ち歩いて聞ける便利さを手に入れた。更にはデータとして購入しチップに保存して聞く、便利になったものだ。同時に録音時間も正確に知ることが出来る。レコードの時代には盤に時間記録など当然無く、CDと違って何でレコードでは録音時間の表示をしないのか、欲しい曲まで飛ばして演奏してくれないのか、と子供に無理を言われたものだ。小さく便利になるに従って消えていったものは、ジャケットの装丁デザインだ。LP時代には作品の個性が表現され、中の歌詞カードや作品紹介や写真を楽しみにしたものだ。配信ではこんなことはない。本のデジタル化も同様の運命をたどるのだろう。ただ、これに逆行する記事が2012年10月12日の日経産業新聞に見られた。「LPレコード最新技術で復活」との見出しで、音楽市場全体が低下している中、アナログレコードの売上が上昇し始めたとのこと。アナログ世代としてはエールを送りたい。
本だって頑張ってもらいたいのだが、それを応援するテレビ番組をご存じだろうか。2013年4月15日にNHK Eテレで放送された「スーパープレゼンテーション」でブッデザイナーのチップ・キッド氏が本の装丁について熱く語っていたのを。デジタル世代にとっては小説も配信が当たり前、時が経てばレコードのようにアナログとデジタルが共存となるのだろうか。文庫本でも集英社文庫でカバーに斬新な写真を取り入れるなど読者を引き込む工夫をしたりしている。個人的には装丁を含めた本の楽しさを味わってほしいのだが。