『偉人たちの脳』 茂木健一郎 2009/02 著者は脳科学者。 サンデー毎日に連載した、歴史や偉人をテーマにしたエッセイ。 日本人には個性がないとしばしば言われる。しかし日本にも「戦国大名」のような個性が輝いた時代があった。この時代の激烈な作用に懲りて、個性を抑える方向に社会が舵を切ったのだと述べる。戦国時代は従来の社会秩序に縛られず、実力で成り上がる時代。そういう社会では個性が重要になる。現在個性がないのは社会秩序の強さの裏返しなのだ。 アメリカで活躍した文筆家ジョージ・サンタヤナは「過去を振り返らない者は、同じ過ちを繰り返す運命にある」という言葉を残した。一方で過去をいくら精査しても、これからとるべき行動について「正解」がわかるわけではない。歴史から学ぶべきことは、個々の局面における「正解」ではなく、何が起こるかわからない未来にいかに向き合い決断するかという「姿勢」である。 日本の大学は、ケンブリッジ大学のような世界的な知の集積場に比べれば、まだまだである。ケンブリッジ大学は1209年頃設立。ライバルのオックスフォード大学は1100年代末には存在していた。対して東大は1877年設立。歴史的な蓄積の長さが違う。歴史の長さが熱帯雨林の生物のように多様性を生む。 創造者・クリエイターとは、人々に今までと異なる形で世界のあり方を見させる人のこと。20世紀最大の「クリエイター」の一人はジョージ・アダムスキーだという。彼が「アダムスキー型円盤」の写真を広めて以降、世界中の人々が「空飛ぶ円盤」を「見る」ようになった。
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