『気になる「ふるえ」がわかる本』 柳澤信夫 2004/03 著者は関東労災病院院長。 「ふるえ」の症状・原因・対処法などについての本。 「ふるえ」を医学用語で「振戦(しんせん)」と呼ぶ。お茶を出したり文字を書くなど、何らかの動作をするときに起こるふるえを、「動作時振戦」という。 緊張・恐怖・興奮など精神的なストレスや、寒さなどで起きるふるえを、「生理的振戦」と呼ぶ。生理的現象なので心配する必要は無い。 高齢になって、とりたてて病気がなくてもふるえが出てくるのは、「老人性振戦」。 振戦は不随意運動のひとつ。ふるえの原因となるような疾患がなく、ふるえ以外の神経症状もなく、ふるえだけを唯一の症状とする病気に「本態性振戦」がある。「本態性」とは原因が分からないという意味。 かつて本態性振戦はどの診療科に行っても「異常なし」とされたが、今では神経系の病気であることが明らかになった。高齢になるほど発症率が高まる。 ふるえをともなう神経疾患で、本態性振戦と並んで多いのがパーキンソン病。安静時のふるえが特徴。脳の「黒質」という部分の異常(老化)が原因と考えられている。 本態性振戦の6~7割は薬(アドレナリンベータ受容体遮断薬)で改善される。ここから考えられるのは、ベータ受容体がアドレナリンの刺激を受けて骨格筋が規則的に収縮するという現象。 一方、定位脳手術で視床神経核を破壊すると、本態性振戦の強いふるえも解消する。このことは先のベータ受容体の解釈と矛盾しており、本態性振戦は複数の要因で起こっていると考えられる。
↧