<裏表紙あらすじ>
城林大ミステリ研究会で、年末恒例の犯人当てイベントが開催され、サークル一の美人・赤江静流が、長身の彼氏を部室へ連れてきた当日、部室の本の上には、あるものが置かれていた。突如現れたシットを巡る尾籠系ミステリの驚愕の結末とは!? 「読者への挑戦」形式の書き下ろし短編、「三つの質疑」も特別収録。
乾くるみが一筋縄でいかない作家だというのは、デビュー作の「Jの神話」 (文春文庫)からして明らかだったわけですが、この「嫉妬事件」は強烈ですねえ。
ジャンル的には、殺人は起こりませんし、ミステリ研を舞台に謎解き合戦が繰り広げられるという、「日常の謎」に属するもの、ともいえるような気もしますが、いやぁ、これ、ちっとも「日常」じゃないですね。
ミステリ・ジャンル「日常の謎」におもいっきり非日常を抛り込んでみた、というところでしょうか!?
いや、もう、すごいなぁ。
上に引用したあらすじに「あるものが置かれていた」とありますが、あるもの、とはタイトルからも想像がつくかもしれませんが、英語でいえば「シット」。尾籠系なんていう表現もありますが...
部室の本棚に並ぶ本(ポケミスという設定です(笑))の上に、う〇こが載せられるなんてこと、ありますか!?
なので、読んでいる間中、ずーっと不快でした。挫折はしませんでしたが、読むのを途中でやめようかなぁ、と何度も思いました。
延々と推理合戦で200ページを超える作品が成立している、というのはさすがだと思うのですが、事件が事件なので、ちっとものめり込めない。素直には楽しめない。なんかこう、拒否感いっぱいで、謎解きをしようという気になれません。
そして、なにより、明かされる動機が...
いや、世間にはこういう動機を抱く人もいるのだ、というのは観念的には理解しなければならないとは思うのですが、うーん、ついていけない。事件の性格にはぴったりなのかもしれませんが。
稀代のゲテモノミステリとして珍重すべき作品なのだと思いました。
ただ、我孫子武丸による解説によると、京大のミステリ研で実際にあった事件がモデルになっているらしく、まったくなんてところなんだ、京大のミステリ研は!!! 実際の事件の真相は不明、とのことらしいので、その事件をもとに架空の真相を乾くるみが構築した作品ということになりますね。
ボーナストラックの「三つの質疑」は、「嫉妬事件」の作中に出てくる犯人当てクイズのテキスト、という設定で、読者への挑戦も入った、堂々たる(?) もの。儀同笛朗博士と羽鳥敬二なんていう登場人物名からもわかるように、ディクスン・カーを意識した作品(と見せかけているだけかもしれませんので、ご注意を)。
こちらは、あっぱれ、と言いたくなるくらいずるい。でもそれでいてなんか思わず笑ってしまうような愛嬌を感じます(我孫子武丸は「よく言えば稚気に溢れ、悪く言えばちょっと姑息」と表現しています)。
ということで、表題作「嫉妬事件」はちょっと苦手でしたが、ボーナストラックの「三つの質疑」は存分に(?)楽しめたので、本全体としてはOKでした。
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