気になった新聞記事を切り抜きとっておいては、読み返すことがあります。本、文章、料理、工芸など大きく分類をしておいて、しばらくたまると整理します。
夏休みに、随分前に分類した新聞記事を読み返していたら、「おおきなかぶ」の挿絵を描いた佐藤忠良さんの記事が数枚ありました。その中の一枚は、2011年4月30日(土)に読売新聞に掲載された記事でした。
「時の余白に」という欄で編集委員の芥川喜好が執筆したものです。「書いておきたいのは佐藤忠良さんのことです。」と始められ、取材の時に語られた忠良さんの言葉が書き留められていました。彫刻家の忠良さんは、3年間のシベリア抑留を体験し、そこで見た人間の正体について、「要領のいいのはインテリだった。普通の勤め人は、もろかった。人間として強く、偉ぶることも飾ることもなかったのは農民や職人だった。」と。
芥川さんは、さらに「自分もまた職人である、という強烈な自覚が彼にはありました。職人に栄誉は不要だからと、文化功労者の内示や芸術院会員への就任を断っています。つまり、自分には栄誉よりすばらしい『日々の仕事』があるということです。その低い視線の前では、地位も名誉も、富も名声も、二束三文でしかないということです。」と書いてありました。
この記事を読み返して、改めて「おおきなかぶ」の絵本を読みました。「ゆきむすめ」という絵本もロシアの風土が描かれています。どんな思い出でこの挿絵を描かれたのか、今までとは全く違った見方ができました。
投稿者:ゆんたく