評価:★★★
水乃サトル・シリーズの一編。
二階堂黎人には珍しく、「アリバイ崩し」がメイン。
とは言っても、時刻表とかは出てこない。
昭和28年、一人の金貸しが殺される。
容疑者は没落華族の娘・二古寺郁美とその元使用人・杉森修一。
しかし二人には鉄壁のアリバイがあり、捜査は行き詰まってしまう。
そして郁美は、マンガ家・天馬ルリ子となって大人気を博していく。
そして34年後の昭和62年。
サトルが知り合いの刑事からこの事件を聞かされた直後、
ルリ子の離婚した元夫が殺害される。
そして今回もまたルリ子にはアリバイがあった。
さすがのサトルもこれを崩すことができず、
解決には、さらに9年の歳月を要することになる。
今回は犯人たちが主役だ。
「名犯人・天馬ルリ子」の活躍(暗躍?)ぶりを楽しむのが
正しい読み方なんだろう。
ラストでは、犯人たち二人が仕掛けたトリックが暴かれるのはもちろんだが
もう一つ、意外な秘密も明かされて、読者は驚くと同時に、
この物語全体に対してある意味 "納得" もさせてくれるだろう。
確かにこれも、きちんと伏線が張ってあったので、
やっぱり二階堂黎人は本格ミステリ作家なんだなあと思った。