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嘘八百 -明治大正昭和変態広告大全-

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ど~も。ヴィトゲンシュタインです。 天野 祐吉 著の「嘘八百 -明治大正昭和変態広告大全-」を読破しました。 最近、日本における第2次大戦、太平洋戦争の勉強という意味ではなく、 大正から昭和の広告だとか、生活用品だとかに興味があって、いろいろ調べています。 本書はそんな勉強向けの一冊で、著者はコラムニスト、または 雑誌「広告批評」の主宰としても有名な天野さんです。 「1990年代に大きな話題を呼んだ、『もつと面白い廣告』と『嘘八百』シリーズ(全四巻)から、 著者が選び抜いた“変態”広告の傑作を一冊に。」 という内容の2010年に出た317ページの文庫です。 とても面白かったので、今回、感想を書いてみました。 嘘八百.jpg 通常の「はじめに」にあたる「前口上」では、 「優れた広告は全て嘘であり、受け手のほうも、嘘を承知で広告を楽しんでる。 『さァさァ、お立合い、聞いてびっくり、しゃっくりが止まるよ』なんて口上を聞いて、 本気でしゃっくりが止まると思う人がいたら、その人の人生は貧しいと言わねばなりますまい」。 嘘の宝庫ともいえる明治大正昭和初期の正しい嘘広告から「正しい嘘のつき方」を学び、 嘘をつく技術の退廃した日本の文化を豊かにしよう・・という内容ですね。 それでは、ヴィトゲンシュタインが楽しんだ広告を「ヒトラー・ジョーク」や 「スターリン・ジョーク」のように、いくつか紹介してみましょう。 天野 祐吉.jpg 第1章は「嘘につける薬(薬品)」の広告です。 明治時代の人々も「にきび」やら、「毛生え薬」やら、気になるのは現代人と同じ。 「毛のはへる香油」、「老人に黑き毛がはへるとは不思議なり」。 広告の下には著者によるユーモアたっぷりの突っ込みが入っていて楽しめます。 嘘八百1.jpg 明治42年(ヴィトゲンシュタインのお祖父ちゃんが生まれた年)の広告は 「良薬にして口に甘し」の浅田飴。へ~、浅田飴って古いんですねぇ。 「たんせきに浅田飴 すきはらにめし」というフレーズがなんとも・・。 嘘八百2.jpg 昭和4年には「喜びに沸く 不死薬が発明さる」。 こんなのが掲載されているのは「東京朝日新聞」です。怪しいなぁ~。東スポみたい。 嘘八百3.jpg肺、胃腸を患んだ極度の悲観から極度の楽観への導きは」 中島の征露丸ですが、昔は日露戦争でロシアを征服したから『征露丸』。 太平洋戦争に負けて、いまの『正露丸』になったそうです。知らなかった。。 しかし下痢だけでなく、肺や胃にも効くんですね・・。 「今では三歳の童児にすら感激的な親しさを以て迎へられるる仁丹」 仁丹の全身像、というか下半身初めて見ました。スタイル抜群です。 嘘八百4.jpg 「男女毛深い方に・・脱毛剤ラベル」。昭和7年の「文藝春秋」の広告です。 「タツタ三分間でスベスベと玉の肌になりました」という女の子の絵。。 どんだけ毛深いんだよ・・。熊じゃないんだから・・。 嘘八百5.jpg 「川添博士 乳の出る薬」も良いですが、「男女やせ薬」は、 「男女ともふとりすぎはデブだ豚だと悪口され見にくいから早く治療してやせなさい」と 命令口調です。 第2章は「珍案特許(珍品・逸品)」です。 「英語を知らぬと犬にもオトル 犬ですら英語がワカル」と大正時代の広告は言ってます。 「少年は今から英語を充分に勉強して置かないと今後はとても立身出世は出来ない。 本校にて発明した『特許英語暗記器』を用いて勉強すれば、コレ迄百日かかっても 覚えないものがタツタ一日で立派に覚えられる。」 嘘八百7.jpg この不思議な教授法はハガキで申し込めば見本を無代進呈するそうですが、 住所が「東京市本郷区大学正門前英語通信学校」というのもイヤラシイ・・。 早い話、東大の目の前ってコトですね。。 これも凄い。「世界的大発明 病気予防器」。 胃腸病から婦人病、動脈硬化症、神経衰弱とあらゆる病気に対応。 嘘八百8.jpg そして、「今日の如く世間の物騒なる時には、夜は枕元に置き、 外出の時には帯や隠しに所持して居れば、病気予防以外更に 萬一の場合、護身用具ともなる」という謎のスーパー・マシンです。 「面白いほど速く泳げる水泳手袋 『ウカール』の発明」。 昭和6年「少年倶楽部」の広告ですから、コリャ子供たちは欲しがったでしょう。。 嘘八百9.jpg 「男子用小便取器 菊式便器」は意味わかりませんね。 「いよいよできました。寝てて小便してみたい」。 チンチンと尿瓶がゴム管で繋がって「自由自在」だそうです。 嘘八百10.jpg 女性向けの昭和初期の広告なら、「安い『乳バンド』」。 「盛夏の外出は、薄着ですから『乳バンド』が、ぜひ必要であります」。 ブラジャーっていつから言うようになったんでしょうかね? 嘘八百11.jpg 左の「奥様ズロース」もキテルなぁ。主婦の友社と有名デパート推奨です。 昭和12年にも読売新聞で「仕事の合間に英語を」。 前年には1936年ベルリン・オリンピックが開催されており、 1940年(昭和15年)は東京オリンピックが開催予定という時ですね。 嘘八百12.jpg諸君!朝凉一時間を割いて立身の武器を獲よ! オリンピツクを控えて帝都の英語熱は沸騰した!」煽ってますな。。 写真は英語猛練習中のバスの車掌さんです。 コレも好きです。「ギャング除け 貞操擁護 ドロボウ撃退器」。 嘘八百13.jpg ガマ口型護身具で、「キュット オセバ ジュット デル わるもの タチマチ タイサン」 というフレーズと挿絵が何とも言えません。 第3章「人には言えぬ悩みあり(性関連)」。段々、楽しくなってきました。 「いもりの黒焼き」に「淋病」、「梅毒」と今で言うエイズ対策は重要です。 そんななかで「男の悩み 早漏=早期射精」も大問題です。 「恐るべき性の破産病早漏の詳細と・・」随分な言い方ですね。 嘘八百14.jpg ヴィトゲンシュタインならとりあえず、左のやつを試します。 「弱いお方に スッポン飴」。 いや~、スッポンは馬鹿に出来ないですよ。 中学生の時、レストランでスッポン・スープを飲んでる最中に大きくなりましたから・・。 そんな男子の悩みは早いだけではありません。古今東西、大きさも重要です。 「若者よナゼ泣く? 問題の生殖器弱小 極度の哀愁より、急回転、無上の幸福へ・・」。 嘘八百15.jpg いったいどんなことが書かれているのかというと、 「折角苦心勉学しても、他日妻を迎へたとて、新婚蜜月の歓楽も失望に帰し、 離婚問題が起こることになるから、生殖器発育不完全があつて泣かないものは腑抜けである。 しかしながら、泣くな若者! 医学博士が9名も実験証明推奨され、 各博覧会では名誉大金杯受領し海外までも名高い専売特許真空水治療法器を、 自分で秘密、簡単、安全に、一日一回僅か五分間づつ使用して治療すると、 忽ち驚嘆すべき理学的真空吸引力により著しき発育が現れ、 同時に神秘極まりないエンツンデユング作用により、局部性神経衰弱を復活して 機能を着々、強健旺盛ならしめ、費用少なく、時日短くて、而も効果は満点的に 弱小も強大化し、元気も溌剌となり人生が明るくなる。 此の如き超スピード的理学療法があるのに、若者よナゼ泣く?早速進んで実験されよ」 いや~、今でも通用しそう。ちなみに昭和6年の広告ですが、 この「真空水治療法器」の価格は四円八十銭です。果たして高いのか安いのか? 「代引き十五銭増し」というのが、生々しいですね。 続いて「青年よ 戒心猛省せよ 不自然 手○の害」も生殖器発育不全問題です。 嘘八百16.jpg 「青少年時代の悪癖とも云ふべき手○は、天理に背く一種の罪悪である。 成長するに従ひ頭が悪くなり学校の成績もだんだんさがり、 入学試験にも落伍してブラブラする様になつたりするのは、多くは手○の害である」。 確かに子供の頃、やり過ぎると馬鹿になるって言われたなぁ。。 あら、コレも「真空水治療法器」の広告でした。 「男子専用珍具大安賣!!」なのは、「クッサ」じゃくて「サック」。 和名は「肉衣」です。。 嘘八百17.jpg一打 金五十銭」ですが、「一打」ってどういう単位なんでしょうか? 早い話、「コンドーム1個」ってコトなのか・・? 「一発」って表現はありますけど。。 第4章は「あなたは美しくなれる(化粧品)」です。 明治38年にはもう「ライオン歯磨き」があったようですが、 「米國大統領ルーズベルト氏の常用品にして・・」というのは。。 嘘八百18.jpg 昭和18年(1943年)にもなると資生堂の広告も悲しいですね。 嘘八百19.jpg 第5章「良い嘘は口に甘し(食品・咆哮品)」。 明治40年の森永の広告で、西洋菓子を作り始めた年だそうです。 嘘八百20.jpg 森永バナナ、フレンチメキスト、スターってどんなお菓子なんでしょう? 個人的には「マシマロー」って響きに惹かれます。 出た。「長命のできる強壮飲料 スピルカ」。 嘘八百21.jpg もちろん「カルピス」ですけど、そんな効能があったとは・・。 森永も昭和14年(1939年 )になると、マシマローとか言ってる場合じゃありません。 「戦線の勇士達の間で呼ばれる愛称です 戦力蓄積丸!嘘八百25.jpgオラガビール」って聞いたこともありませんでした。 嘘八百22.jpg 「もう工場を出て今や御宅の付近にあり」って、 まるでスーパードライのCMみたいですね。これが昭和5年ですよ。 最後の第6章は「言葉の曲芸団(娯楽・その他)」。 大正7年、浅草の三友館での日活の映画広告です。 メインは右の尾上松之助ですが、左の「番外 怒涛乗り切り」が凄い。 嘘八百26.jpg 「全世界を通じて比なく類なき決死断行の最新競技、海國男児見落とすべかざる、 天下稀有の冒険的競技ワイキキ海上に於て決行せる 常時すべての生命保険解約を迫まらる他は・・」。 著者曰く、「もしかしたら、ただのサーフィンじゃないの?」 同感。 そういえば通っていた湯島小学校ってかなり古い小学校でして、 地下の入り口に、「無用の者、入るべからず」と墨で書かれた木の看板が怖かったです。。 大正12年のエロ本広告。「艶麗なる裸体美人写真 分譲」。 「決して凡夫は見るべからず」とか、「俗悪品のニセモノあり御注意乞ふ」が好きですが、 昭和6年のコレが最高です。「最新刊 東京エロ・オンパレード」。 「●全巻皆殺人的エロ!」 死なない程度にチラ見してみたい・・。 嘘八百24.jpg 山中峯太郎著の「敵中横断三百里」は売れに売れて、百四十版までいってます。 「陸軍の諸将星 口を極めて激賞」というように、かなり有名な一冊のようです。 嘘八百27.jpg 「小説ではない。生々しき事実だ。建川中尉以下六名の挺進斥候が凄壮なる大苦闘を以て、 奉天総攻撃の大軍略を決定せしめた日露戦争裏面に潜む大秘録だ! 児玉将軍をして『人間業ではない』と、涙と共に絶叫せしめたる、一大快挙の記録だ!」 や~、そんな言われると読んでみたくなります。 1957年に「日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里」という映画にもなっているんですね。 脚本はあの「世界のクロサワ」だそうです。 日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里(1957).jpg まぁ、久しぶりに大笑いしました。 本書はポスターといった類ではなく、新聞・雑誌の白黒広告が対象ですから、 デザインよりも、怪しい文言を楽しむ一冊であるわけですが、 やっぱり右から読むのは慣れてませんから、「スピルカ」や「クッサ」だけでなく、 「ルーガ」なんて出てくると、「ウゴウゴルーガ」を思い出してしまいました。 オリジナルの『嘘八百』シリーズ(全四巻)も読んでみたくなりましたので、 先ほど四巻まとめて買ってしまいました。 ついでに「ナチス親衛隊装備大図鑑」も買ってしまい・・ました。ぐはー!( ‘ jjj ’ )/


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