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アンドリュー・ガーストル『江戸をんなの春画本 艶と笑の夫婦指南』(平凡社新書)

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先日の『張形と江戸女』がたいそう面白かったので、もう1冊同じ畑から貰ってきました。『張形と江戸女』でも少しだけ触れられた、より実用的な上方の春画・春本の研究書です。 どういう方向に実用的かというと、主に女性向けに夫婦生活についての指南を行っているところです。かといって女子限定!!でもなく、男性も一緒に読んで実践できる内容もちょっとだけ含まれているそうです。 特筆すべきは、これらが当時の教訓書や実用書のパロディとしてつくられている点ですね。『女大学宝箱』を元ネタにした『女大楽宝開』とか、貝原益軒先生にはまことに、まことに申し訳ないのですが大爆笑でした。序文から始まって本文はもちろん、挿絵まできっちり原典をもじって作られていて、細部にわたるまで作者の意気込みを感じさせます。オリジナルで描かれている儒教的な理想の女性像に対し、夫婦仲がえぇのが一番やで~と主張する『女大楽』の方が、現在の視点から見ると共感できますね。道徳観についての話は置いておきましても、何より笑えるということが素晴らしいと思います。 こんな楽しい実用書を制作したと考えられる(春本は著者名や絵師名が明記されないのが通例なので)月岡雪鼎は、浮世絵師ではなく狩野派の画家として上方で活動しつつ、春画も手がけていた人だそうです。カラー図版で掲載された作品も素晴らしいし、東京美術さんのもっと知りたいシリーズで出してくれませんかね。 江戸をんなの春画本-艶と笑の夫婦指南 (平凡社新書)


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