「そこにいるのはツノ男爵だろう?かくれていてもムダだ。あきらめて出てきた方が身のためだな。もし、『銀の手』を持っているなら、おまえ達の身の安全と交換してやってもいいぞ!」 プミリオ王子のその言葉に、ツノ男爵とタケルは顔を見合わせる。「良かった!まだ見つかってないんだ」と小声で話したその後だった。 「誰がお前達にやるか!アッカンベロンチョ~」タケルは 『あかんべ』 をしたまま出て行くと、またすぐに木箱にもどった。 「なんだ!今のは、人間か?われらがもっともにくむ人間なら、こらしめてやる絶好のチャンスだ。みんな用意はいいか!あの人間めがけて、いっせいに矢を打つのだ!」 プミリオ王子の声は興奮し、ますますキンキンになっている。「しまった。タケル!何をやっているのじゃ。さぁて、どうしたものかのう?」 ツノ男爵は、タケルの行動に頭をかかえていると、またまたとび出していった。「おーい、こっちだよ!」タケルは、足もとにある小石を次から次へ、サッカーボールのようにけり始めた。 そのロングシュートが、矢をかまえていたカエルにおもしろいように当り、バタバタと全員たおれていった。急展開のできごとに、ツノ男爵はポカンとした顔して、木箱から出てきた。 「ど、ど、どーしたことじゃ。いったいこれは」 タケルも自分の命中率におどろく。「ヘ、ヘ、実は僕、幼稚園の頃からサッカーを習っているんだ。 この間の試合でね、僕のシュートミスで負けちゃってさ。くやしくて毎日練習していたんだよ。だからだよ。でも、あのカエル達にはちょっとかわいそうなことしちゃったな」
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