『国会改造論』 小堀眞裕(まさひろ) 2013/06 著者は立命館大学法学部教授。 日本と諸外国の議会・選挙制度を比較して日本の問題点を探る本。 日本の国会が「ねじれ」る原因は以下の4つ。①英国的な衆議院と米国的な参議院の折衷。 ②予算に関する衆議院の優越が中途半端。 ③両院が別々の時期に選挙する。 ④小選挙区・2大政党制は憲法上無理だった。 しかし、ねじれ自体は悪いことではない。米国議会は常にねじれてきた。 米国上院は州の代表2名づつ100人の定員。人口比にすると、66倍ほど差がある。州=国なので、国連で各国の人口が考慮されないのと同じ理屈。 日本の国会議員歳費は年間2千百万円で、諸外国から突出している。米国千3百万円、英8百万円。国会議員給与が一般の国家公務員給与の最高額を下回ってはならないなどという基準を持っているのは日本だけ。また政党助成金を300億円も毎年支出している国も日本だけである。選挙に金がかかるという言い分があるが、現状では新人が圧倒的に不利・現役有利になり不公平である。法の下の平等を国が率先して危うくしている。 GHQは一院制を考えていた。「州がないのだから上院は必要ない」という論理だった。しかし、二院制のほうが性急な政権交代の歯止めになるという日本側の主張で参議院が作られた。このときは「ねじれ」は肯定的に考えられていた。 GHQ草案では「予算の型は英国制度に倣うこと」とあったが、GHQも日本側も英国の議会慣習を知らなかった。結果衆議院の優越が中途半端になってしまった。 他国でもねじれが生じることはあるが、多くは上下両院の選挙が同時に行われて解消される。 英国の2大政党制は、民選議員が庶民院だけという背景から作られた。衆参両院を選挙で選ぶ日本はねじれやすくなっている。 参議院改革のためには憲法改正が必要であるが、当面は首相の解散権で衆参同時選挙でねじれにくくするという方法もある。
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