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【読書日記[17]】ほからなぬ人へ@白石一文

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白石一文著「ほからなぬ人へ」を読了。 51UOR+J0OPL__SX230_.jpg 推理小説や冒険小説ばかり読んでいるとお思いでしょうが、HC君は純文学も読むのです! 特に著者・白石一文の作品は彼のデビュー作「一瞬の光」から全て読んでいます。世代的にほぼ同じ彼の作品はいつもどこか僕の琴線に触れ、デビュー作を読んだあと、ああーこの人は近い将来、直木賞はじめ色んな文学賞をとるだろうな、と思った作家でした。 ご紹介する「ほかならぬ人へ」は、その予想が見事当たり平成21年度下期直木賞を受賞しています。 今回は、読み直しですが、彼の描く愛への本質にはどこか共感が持てますし、素敵な一冊だと思います。 あらすじ: 「ほかならぬ人へ」 二十七歳の宇津木明生は、財閥の家系に生まれた大学教授を父に持ち、学究の道に進んだ二人の兄を持つ、人も羨むエリート家系出身である。しかし、彼は胸のうちで、いつもこうつぶやいていた。「俺はきっと生まれそこなったんだ」。 サッカー好きの明生は周囲の反対を押し切ってスポーツ用品メーカーに就職し、また二年前に接待のため出かけた池袋のキャバクラで美人のなずなと出会い、これまた周囲の反対を押し切って彼女と結婚した。 しかし、なずなは突然明生に対して、「過去につき合っていた真一のことが気になって夜も眠れなくなった」と打ち明ける。真一というのは夫婦でパン屋を経営している二枚目の男だ。「少しだけ時間が欲しい。その間は私のことを忘れて欲しいの」となずなはいう。 その後、今度は真一の妻から明生に連絡が入る。彼女が言うには、妻のなずなと真一の関係は結婚後もずっと続いていたのだ、と。真一との間をなずなに対して問いただしたところ、なずなは逆上して遂に家出をしてしまう。 失意の明生は一方で、個人的な相談をするうちに、職場の先輩である三十三歳の東海倫子に惹かれていく。彼女は容姿こそお世辞にも美人とはいえないものの、営業テクニックから人間性に至るまで、とにかく信頼できる人物だった。 やがて、なずなの身に衝撃的な出来事が起こり、明生は…。 「かけがえのない人へ」 グローバル電気に務めるみはるは、父を電線・ケーブル会社の社長に持ち、同じ会社に勤める東大出の同僚・水鳥聖司と婚約を控えて一見順風満帆に見えるが、一方でかつての上司・黒木ともその縁を切れずにいる。黒木はいつも夜中に突然電話を寄越し、みはるの部屋で食事を要求した後、彼女の身体を弄ぶのだ。みはるはみはるで、聖司という婚約者がいながら、何故か野卑とも言える黒木に執着している。黒木が言うには、五歳から大学に入るまでの十三年間、都内の養護施設を渡り歩いていたというが、黒木を見ていると、苦労が必ずしも人を成長させるとは限らない、とみはるは思う。 一方で、社内では業績不振も相俟って、他社との合併話が進行していたが、それを巡る社内の政争のあおりを受けて、黒木の後ろ盾である藪本常務の立場が危うくなっていた…。


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