ニューヨーク五番街にある人気デパートのショーウィンドウの中から女性の死体が飛び出した。被害者はデパートの会長の後妻で、本人のものではない口紅とスカーフを所持していた。しかも口紅の奥には、謎の白い粉が隠されており… 実はフランスにもおしろいにも全く関係のないお話です。にもかかわらずぴったりはまるタイトルが、まず最高に格好いいですね。 ショーウィンドウに隠された死体という派手な幕開けに反して、エラリーの導き出す推理と真相は驚くほど堅実で地に足の付いた理由に基づいています。これが誰とは言いませんが他の探偵だったら、あと三つくらい猟奇殺人が起きそうですよ。 だからといって簡単に予想が付くわけでもない、冒頭からは想像もできない意外性に富んだ展開が待っているところも素敵です。デパート経営者一族の因縁が起こした惨劇かと思いきや…読者の期待に応えつつ外すところは外す、ネタバレにならずに紹介できないのがどうにももどかしいです。ただ、これはニューヨークのデパートという設定でなければあり得ない事件だと思います。解説にある「都市小説としての推理小説」の一つの形ですね。横溝正史の都会を舞台にした作品を少しだけ連想しました。
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