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「宇宙観5000年史: 人類は宇宙をどうみてきたか」

★ あらすじ

天文学の科学史の一冊である。著者によるとこれまでの天文学史は
科学史の専門教育を受けた科学史家と、現代天文学に携わる研究者で天文学の歴史にも興味を抱くもの
のどちらかの立場から書かれたものがほとんどである。が、これら双方の立場を融合した視点で捉える必要があると考え、本書を編んだ。 本書は放送大学の「宇宙観の歴史と科学」(2008~2010年放送)が元になり、その後の天文学の発展を取り込みつつ再編されたもの。 世界の四大文明は天文を、宇宙をどのように捉え、考えていたのかから始まる。宇宙はどうなっているのかという見方(もちろん、当時の人々の"共通感覚(常識)"でとらえた姿だが)と、生活のために正確な暦が必要で、天体の運行観察に傾注していったものと、二つの大きな立場があった。前者は、宇宙は大きな亀の上に乗ってといったものであり、後者は太陽の運行や月の満ち欠け、惑星の運行を見定めようというものだ。この時代、宇宙は意外と身近な存在だった その後、"科学的"観察や解釈をしていくという態度・姿勢が広まり、天動説 v.s. 地動説といった論争になっていく。そこにはもう大きな亀は登場しない。しかし、(その代わりに?)神が必要かどうかの議論になっている。決め手はやはり、天体の運行をどちらがより正確に予測できるか。さらにそれは正確で精力的な観測結果の積み重ねによる。 観測といっても、望遠鏡が発明されるまでは、そしてそれ以後もしばらくは肉眼で行われていた。その努力と苦労たるや想像もできない。 科学の時代になると新たな発見がどんどんと為されていく。分光学によって星から来る光を見れば中身(構成成分)が分かるようになり、天体の姿がより深く分かってくる。そして地動説どころか、太陽でさえ宇宙の中では一つの銀河の、隅っこの星に過ぎないことが示され、宇宙はどんどんと"広がって"いったのだ。 さらにはビッグバンやダークマター、ダークエネルギーなどの宇宙観が唱えられてくると人間の直感、いや現代人の共通認識・常識では理解できない状態になってきている。 我々の宇宙観はこの先、どのようになっていくのだろうか。

★ 目次

  • 第Ⅰ部 古代・中世の宇宙観
    • 1章 古代天文学と宇宙観――四大文明と新大陸
    • 2章 天文学の発祥と地球環境
    • 3章 ギリシアの宇宙観――天動説と幾何学的宇宙
    • 4章 中世の宇宙観
  • 第Ⅱ部 太陽中心説から恒星の世界へ
    • 5章 太陽中心説とコペルニクス革命
    • 6章 精密観測にもとづく真の惑星運動の発見――ティコとケプラー
    • 7章 宇宙像の拡大――望遠鏡の発明と万有引力の法則の発見
    • 8章 地動説の検証から恒星天文学の誕生へ
  • 第Ⅲ部 天体物理学と銀河宇宙
    • 9章 新天文学の台頭と発展
    • 10章 太陽・星の物質の解明へ
    • 11章 銀河系と銀河の発見
    • 12章 宇宙膨張の発見とビックバン宇宙論
  • 第Ⅳ部 宇宙における人間の位置
    • 13章 太陽系像の変遷
    • 14章 私たちはどこから来たか――地球外生命を求めて
    • 15章 万物の尺度の探求――メートル法の制定と測地学の誕生
    • 16章 宇宙観の表現法――星表と星図の歴史的変遷
  • 附録
    • A 新しい宇宙観の幕開け
    • B ETIは本当にいるのか――第14章への補遺

★ 感想

四大文明における宇宙観(宗教観?)から話が始まり、天動説・地動説、銀河系の発見、ビッグバン、SETI、そしてダークマターにダークエネルギーと話が来て、終わりには人間原理の話にまで至る。題名に偽りなしの壮大な科学史を概観した、他に類を見ない一冊だ。 そして、人類は宇宙をどう見てきたかと共に、それによって人類は自分たちが何者であるかを見てきたとも言えるのだということがよくわかる。人間原理や異星人探索(SETI)などの話も出てきて、知的好奇心が刺激された面白い本だった。 ちょっと専門的なところもあるが、大いにおすすめの一冊だ。
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