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鷺と雪

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鷺と雪 (文春文庫)

鷺と雪 (文春文庫)

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/10/07
  • メディア: 文庫
<裏表紙あらすじ> 昭和十一年二月、運命の偶然が導く切なくて劇的な物語の幕切れ「鷺と雪」ほか、華族主人の失踪の謎を解く「不在の父」、補導され口をつぐむ良家の少年は夜中の上野で何をしたのかを探る「獅子と地下鉄」の三篇を収録した、昭和初期の上流階級を描くミステリ〈ベッキーさん〉シリーズ最終巻。第141回直木賞受賞作。 「街の灯」 (文春文庫)「玻璃の天」 (文春文庫)と続いたシリーズの最終巻で、直木賞受賞作です。 昭和初期を舞台にした、日常の謎の連作、というのがこのシリーズの体裁で、探偵役として日本ではまだ珍しい女性運転手ベッキーさん(別宮みつ子)を配し、ワトソン役で貴族の令嬢わたし花村英子の成長物語としての側面もあります。 最終話に来て、シリーズ全体の構想が、堂々と(?)明らかになります。あらすじを読んだだけで気づいてしまう人は多いと思いますが、日常の謎の中に、大きな大きな非日常を持ち込んでみせた、というのがミソなのだと思いました。 当時の上流階級を描く、というのもシリーズの狙いの一つであったのだろうとは思いますが、シリーズの結末を考えると、主人公はハイソな家柄でなければならなかったことがわかります。--為念申し添えますが、シリーズの締めくくりに向けた趣向という以外に、日常の謎の解決の方も、お金持ち、華族だからこそ、という仕掛けやトリックがあふれていてミステリ的にも充実しています。 周到に、周到に、北村薫はこのシリーズ三部作を書いていたのだなぁ、と深く感嘆。 日常の謎を彩る上流階級の華やかな生活。のびやかに自由を求める英子。「わたくしは、人間の善き知恵を信じます」と言い切る凛としたベッキーさん。それらすべてが、日常と非日常の対比目がけて、まさしくこれ!と言いたくなるくらい精緻に配置されています。 この作品を綴る淡い筆致も、重いテーマをそーっと掬い取るように、繊細な細工を見ているようです。 一見派手なところはなく、地味な作品に見えますが、そこは北村薫、なかなかどうして、深いたくらみに満ちた、シリーズでした。 それにしても、その後の英子やベッキーさんを知りたいなぁ。 文庫本の表紙をシリーズ三冊並べてみると、どことなく味わい深く感じますね。
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街の灯 (文春文庫)
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玻璃の天 (文春文庫)
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鷺と雪 (文春文庫)

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