縁日などで見かける面は表の屋号で出すもの。そして、自らのなりたい人間に姿かたちを変えられる妖面は裏の屋号で出すもの。しかし、面を付ける代償は大きく、場合によっては人として生きることがかなわなくなり…。危険なものと知りつつも人々は面を求めお面屋を訪れる。シリーズ第1弾。
表と裏。光と闇。どちらの世界も知ってなお、少年たちは面を売り、旅を続ける。
好きだな! 妖面や天狗が登場する本作は時代ファンタジーの雰囲気を感じる。そして、主役の太良と甘楽の役割や立ち位置がとても気になった。石川さんの本は『ユリエルとグレン』以来だけど、ユリエル~は本物の兄弟が主人公で、本作は血は繋がっていないけれどまるで兄弟のような二人が主人公。
赤子の時に天狗の棲む山に捨てられた二人は、面作師の修行のもと面を売って全国を渡り歩いている。彼らのもとへ妖面を買いに訪れる人々の物語は、人の想いの移ろいがとても切なく、最後は余韻に浸ってしまう。安易な幸せをかかないところが好き。特に「枯れない花」がお気に入りです。年頃の少女なら誰もが抱えているであろう感情が妖面を付けたことで変わっていく様が。
そして太良と甘楽。表・裏の面を売るだけでなくとある重い役割も担っている二人は、それでも面作師として生きていくと決めている。そんな彼らを見守る姿…天狗たちの存在感が、わりと大きい(笑)。とても過保護になってますよ、みなさん!血の繋がりは無いけれど、太平と甘楽、育て親に天狗たちの間には家族といえるあたたかい繋がりを感じ取れてほっこりする。特に太平と甘楽は「あんじゃ」のやり取りが、にやりとする一方で少し背伸びをしている感じで、少しグッときたり。
続刊もあるようなので手にとってみよ。1話で登場した迅雷の小天狗坊にもまた会いたいな!