『米中百年戦争』 春原(すのはら)剛 2012/12
著者は日経新聞ワシントン支局を経て編集局国際部。 米中間のここ数十年の外交を日本の視点で見た本。
米中が国交正常化したのは1979年。以来、米国が最も気にしているのは、台湾の独立問題を契機とする米中間の前面衝突である。尖閣諸島のような小さな島を巡る日中間の紛争には巻き込まれたくは無く、そうすべきではないというのが本音だと述べる。
米軍が台湾有事に介入した場合、日本の米軍基地が弾道ミサイルなどで攻撃される可能性が指摘されている。米軍の空軍戦力を沖縄以外に分散させることが提言されている。
中国は米空母打撃群の接近・展開・作戦行動を対艦弾道ミサイルASBMや巡航ミサイル、ステルス戦闘機などで阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」作戦の実行力を高めている。
1996年3月の台湾海峡危機では米国は2つの空母機動艦隊を派遣して中国に手を引かせた。当時の空母艦長は「怖いものなど何もなかった。しかし今は残念ながらそのようなことは言えなくなった」と述べる。
1998年にクリントンが「三不政策」を発表する。①「2つの中国政策」を支持しない。 ②台湾が国家として国際機関に加盟することを認めない。 ③台湾の独立を支持しない。 「独立不支持」を明言したことは、一方的に中国に譲歩したと批判されることになる。
2007年1月に中国は衛星攻撃兵器ASATの実射実験を行う。5月には中国海軍から太平洋二分割論が出される。
2011年1月にはステルス戦闘機(殲20)J20の試験飛行をおこなっている。空母の配備にも意欲的でA2ADに必要な戦力を着実に積み重ねている。
米戦略国際問題研究所のジェームズ・マンは中国の将来として、近代化した経済を背景とする恒久的な独裁体制が確立する可能背が高いという。21世紀後半の世界秩序は中国主導で形成されることもありうると警告する。
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