内容(「BOOK」データベースより)今年7月、ユーロマンガ編集長のフレデリック・トゥルモンドさんの講演会開催のお手伝いをしたのがきっかけとなって、フランスのマンガ「バンド・デシネ」(BD)について興味を持ち、とりあえず近所の図書館で借りられる作品から順次読んでみることにした。『天空のビバンドム』は、フレデリックさんが各所で薦めておられただけでなく、多くの識者が面白いとイチオシ作品として挙げておられる。たまたま図書館で貸出の順番が回ってきたので、先週、その日本語訳を借りて読んでみた。BD挑戦2作品目。 フランスでは3冊に分かれていた話を日本語版では1冊にまとめている。確かに、日本のマンガともアメコミとも違う。単行本形式だし、ページをサクサクめくって読み進められる作品でもない。巷間言われているように、日本のマンガはBDに比べて各ページ各コマが軽い。アメコミは1話完結で1冊1冊が非常に薄く、サイズもB5判程度だと思うが、BDは『ビバンドム』の1部だけを取っても50頁程度はあり、サイズはA4の変形判といった感じだ。 BDは読んでいて考えさせられる。考えて読み進めないと何が書かれているのか理解がしづらい。特に、事故で頭だけが残ったロンバックス教授が、なぜ2人も登場したのかが全くわからなかった。ヘモ=サピエンス=グロビン市長は気持ち悪い。無数の人間の集合体でできているが、その人間が時折離散したりするものだから、市長の体がペラペラになってしまったりもする。ああそういうことかとわかった時点でもう一度前に戻って読み直さないと、どういう状況で市長の体がペラペラになっていたのか、その時人間たちはどこにいたのかがわからない。 一応主人公はアザラシのディエゴとなっているが、ディエゴのセリフはほとんどなく、悪魔が乗り移って汚い言葉を吐くところぐらいしか喋っていない。時系列順に描かれているとは思えない箇所も存在し、なんでこういう展開になるのか理解できない箇所も結構あった。あらすじ解説を予め読んでおかないと、どんな話が展開しているのか、なかなか理解できない。こうして作品紹介できるほど読んで理解しているわけではないのが心苦しいが、一種の美術作品だと考えれば1冊ぐらい自宅の蔵書としては置いておきたい気分にさせられる作品だ。
ピュアなアザラシのディエゴを操って、自分たちに都合の良い「物語」を作ろうと、市の権力者や悪魔、犬や鶏たちもが争うファンタジー・ストーリー。首だけになったロンバックス教授や乱暴者の悪魔が物語のナレーションを奪い合ったり、無数の人間の集合体で出来た市長が「愛のノーベル賞」をディエゴに獲らせようと企てる。はたまた、犬たちが語る摩訶不思議な人間の歴史まで飛び出して…。物語を手中に入れたい者たちの面白おかしいドタバタを、自由奔放なタッチで綴る漫画作品。全ての画材をつぎ込んだという驚異のカラーリングは、フランス漫画の最高峰に位置する記念碑的傑作。
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『天空のビバンドム』
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