職場復帰したとたんにものすごい暑さに見舞われ、急性認知症になったような感じです。 部屋も閉め切り、昼夜を問わず遮光カーテンを引いて、外部の熱気が入ってこないようにしています。 引きこもりの家みたい・・・。 さらに、内側から冷やそうというわけではありませんが、 久しぶりのおすすめブックスは、アン・クリーヴスの「シェトランド4重奏」シリーズの2冊 『野兎を悼む春』と『青雷の光る秋』(創元推理文庫)。 同シリーズの『大鴉の啼く冬』と『白夜に惑う夏』もすでにブログで紹介したと思っていたのですが、 探しても見当たりません。ふしぎ。急性認知症と書きましたが、すでに慢性認知症だったのか・・・。 ま、気を取り直して、 『野兎』の方の季節は春。 舞台は、シェトランド本島とは定期的にフェリーが行き来するウォルセイ島。 このシリーズは、シェトランド本島の州都ラーウィックにあるシェトランド署に勤務するペレス警部が主人公といってもよいのだが、この本で物語の中心となるのは、その若い部下サンディ・ウィルソン刑事。 ウォルセイ島は、彼の生まれ故郷なのだ。 サンディの祖母ミマが住む小農場では、考古学の大学院生ハティらによって中世の遺跡の発掘調査が行われている。 そのミマからの電話で、久しぶりに小農場を訪れたサンディは、そこで愛する祖母ミマの死体を見つける。どうやらイトコのロナルドが兎と間違えて撃った弾が当たったらしい。 サンディは本島からやってきたペレス警部に命じられ、ひそかに事件の捜査にあたることになる。 やがて浮き彫りになる島の人々の濃い血縁関係と閉鎖性の陰に潜む、因縁や確執。 シェトランドは、今でこそ英国スコットランドの最北の州ということになっているが、 中世には、バルト海沿岸の都市によるハンザ同盟の下での重要な港として交易の中心をになってきた。かつてはノルウェーに属していたこともあり、第二次世界大戦時には、ドイツ・ナチスの侵略に対する抵抗運動に加担して活躍したという、誇るべき歴史をもつ。 こうした歴史に、人付き合いの苦手な大学院性ハティの秘密もからんで、単なる誤射による事故と思われた事件は、あらたな展開を見せる。 そしてペレス警部とともに、ひそかに捜査にあたったサンディは、徐々にしっかりとした一人前の刑事に育っていく。 ペレス警部は、その名が示す通り、祖先はシェトランド島に流れ着いたスペインの漁師だといわれている。単なる捜査に留まらず、人々に深く関心を寄せ、共感してしまうのが自分の弱点だと思っている。 そのペレス警部が恋人フランを親に紹介するために故郷フェア島を訪れるのが、『青雷の光る秋』。 ここはウォルセイ島以上に、辺鄙で孤立した島だ。 島にはバードウォッチャーたちが訪れるフィールドセンターがある。そこで、ペレスとフランの婚約パーティが開かれた直後、センターの職員アンジェラが殺される。 だが、折からの嵐で交通が途絶、フェア島は孤島となるなか、さらにセンターの料理人が殺されているのが見つかる。なぜ?誰が? 荒涼としたシェトランドの島々と濃密な人間関係を背景に、奇矯なキャラクターをもつ登場人物は、この作者のお得意のシチュエーション。 その中心で、静かに思考をめぐらすペレス警部に思わぬ運命が・・・。 シェトランド四重奏はこれで終章となるのだが、どうやら続編があるらしい。
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