『カーストから現代インドを知るための30章』 金基淑 2012/08 著者は京都文教大学教授。執筆者は他に12人。 現代インドでカーストがどのような役割をしているかという本。 カーストは職種によって区分された職能集団である。現在はカーストによる差別は法的に禁止されている。最近ではカーストに代わる言葉として「サマージ(協会)」という語が多く用いられる。社会的・経済的変動により、自カースト固有の仕事に携わる人は多くない。司祭など一部を除き職業選択にカーストが障害となることはなくなっている。 カースト間の経済的相互依存関係をジャジマーニー制度という。 カースト集団は基本的に自カーストと同種のカーストとしか結婚しない。カーストは内部においてゴートラ(氏族)に分かれている。同じゴートラ同士は結婚できない。 カーストの数は2000とも3000ともいわれる。これらは、ヴァルナと呼ばれる4グループと不可触民に分けられる。ヴァルナを構成するのは、ブラーマン(バラモン、司祭・学者)、クシャトリヤ(王侯・戦士)、ヴァイシャ(商人・平民)、シュードラ(奴隷民・農民・職人)。シュードラ以外の3つは再生族と総称され、宗教上の再生を果たすとされる。シュードラは再生の儀礼が許されない。 不可触民は公的には「指定カースト」と呼ぶようになっている。今なおブラーマンが最高位で不可触民が最低であることに変わりはない。指定カーストや指定部族(トライブ)など「後進諸階級」には優遇措置が取られ学校や公職で枠が用意されている。 インドにはカーストとともに「トライブ(部族)」という社会範疇が存在する。トライブはジャングルや山岳部に住み、カースト社会(文明社会)から隔絶していると認識されている。 ブラーマンは日本では伝統的に「バラモン」と称してきたが、これはサンスクリット語の漢字訳「婆羅門」の日本語読みである。 インドでは近年相手のカーストを直接尋ねることが失礼とされ、「どのサムダーヤム(社会)か?」と聞くことがある。実際にたずねているのはカースト名であるが。 インドに住むムスリムにもカーストが存在する。イスラームではアッラーの下皆平等のはずなのだが。 不可触民で仏教に改宗する人がいる。改宗仏教徒と呼ぶ。仏教徒はカーストを否定し平等を謳う。しかしインド全土での仏教徒は0.77%にすぎない。
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