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齊藤想『犬のおまわりさん』

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お正月ということで、ほっこりとする童話でもUPします。 JOMO童話応募用として、平成20年5月に書いたようです。 ―――― 『犬のおまわりさん』 齊藤想  犬のおまわりさんがパトロールをしていると、公園でこねこがないているのをみつけました。 「こんなところでどうしたのかな? まいごになったのかな?」 「ミャーミャー」  こねこはなきながらやねのむこうがわをゆびさしました。けど、これだけではおうちがどこにあるのかわかりません。 「どこからきたのかな?」 「ミャーミャー」  犬のおまわりさんはねこ語がわかりません。ねこ語とはねこのあいだでつかわれている言葉です。こまったなあと思っていると、キツネのお母さんが通りかかりました。キツネさんとねこさんは遠いしんせきです。犬のおまわりさんはキツネさんならねこ語がわかるかもしれないと思いました。 「コーン、コン」 「ミャーミャー」  ざんねんなことにキツネのお母さんもねこ語はわかりませんでした。「おうちで子どもたちがおなかをすかせてまっているからすぐにかえらなくてはいけないの。ごめんなさいね」といって家にかえってしまいました。  犬のおまわりさんはこまってしまいました。そこにカラスのお兄さんがやってきました。カラスさんは大きなはねをひろげて、いろいろなところへ旅をしています。ものしろのカラスさんなら、ねこ語がわかるかもしれません。  犬のおまわりさんはカラスのお兄さんを手まねきしました。カラスのお兄さんはさっと、こねこのよこにまいおりました。 「カーア、カア」 「ミャーミャー」  ざんねんなことに、カラスのお兄さんも、ねこ語はわかりませんでした。カラスのお兄さんは空になかまのカラスがいるのを見つけると、黒いつばさを広げてとんでいってしまいました。  犬のおまわりさんがさいごにたよりにしたのはアリさんたちでした。アリさんはいつもまちじゅうを歩きまわっています。アリさんならしっているかもしれません。 「ワンワン」 「テクテク」  しかし、アリさんたちはにもつをはこぶのがいそがしくて、ないているこねこをかまってやるひまはありませんでした。アリさんたちは、いつもしごとをしているのです。  犬のおまわりさんはためいきをつきました。 「どうすればこのこねこをたすけることができるだろうか」  そのときです。 「コーン、コン」 「コココンコン」  キツネのお母さんが子どもをつれてやってきました。子どもたちだってねこ語はわかりません。けどいっしょうけんめいに話をきこうとしています。  空がさわがしくなったとおもったら、たくさんのカラスがこねこをかこみました。あのカラスがともだちをつれてきてくれたのです。  どこで見つけたのかアリさんたちがあめ玉をはこんできてくれました。こねこはあめ玉を口にふくむと、ぽっと顔がほころびました。  言葉はわからなくても気持はつたわります。道という道をキツネさんたちが走りまわり、町中をカラスさんたちがとびつづけ、そしてアリさんたちはみんなでこねこの家をさがしています。  こねこはなきやみました。言葉はわからなくても、みんなにはげまされていることを感じたのです。  しばらくして公園のむこうがわからお母さんがやってきました。みんなが力をあわせて、見つけてくれたのです。お母さんはこねこをぎゅっとだきしめると、顔中をなめまわしました。 「ニャーニャー」 「ミャーミャー」  犬のおまわりさんはこれでひとあんしんです。思わずよろこびのこえをあげると、みんなもこえをだしました。 「ワンワン」 「ニャーニャー」 「ミャーミャー」 「コーン、コン」 「カーカー」 「テクテク」  はなす言葉はバラバラですが、気持ちはしっかりとそろいました。 ――― 数人の方に読んでもらい、けっこう好評だったのですが、JOMO童話の壁はあまりに厚かったです。 自分の作風として、ブラック系とほっこり系があるのですが、最近はほっこり系をあまり書いていないので、またほっこりするショートショートを書きたいと思っています。 ほっこり系に向くショートショート公募があればですが(笑)


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