「長くつしたのピッピ」や「やかまし村の子どもたち」「名探偵カッレくん」など、
子どもたちの生活や冒険を豊かな創造力で描いた作品で知られるリンドグレーン。
でもこの「小さいきょうだい」は、それらのポジティブでユーモアあふれる作品とは
ちょっと違う趣の、4つの作品をまとめた短編集です。
まず、どの作品も
「むかしむかし、貧乏がひどかったころ」で始まり、主人公はいずれも恵まれない
境遇の子どもたち。
貧しい生活や病気と闘ううち、ファンタジックな世界に入っていくところは同じ構成
なのですが、最初の2つの物語「小さいきょうだい」「ボダイジュがかなでるとき」
と、後半の2つ「カペラのヒツジ」「公子エーカのニルス」とは大きく違います。
前半の2作品は、リンドグレーンには珍しく、悲惨さを秘めた意外な結末なのです。
でも、子どもの読者のために、あくまでもやさしい語り口なので、子どもたちは
「ああ、最後はやっと幸せになれてよかったね」と思えるでしょう。
しかし、大人が読むと、物語の真意がわかります。
私は最近改めて読んで、
「なんて美しく悲しい物語なんだろう!」と感嘆してしまいました。
特に「ボダイジュがかなでるとき」はなんとも言えないやるせなさと、まるで天使の
物語のような神々しさを感じます。
それに対して後半2作は、ハラハラする展開ののちにハッピーエンドを迎える物語。
ただし単純なお話ではなく、「公子エーカのニルス」では、地の文に物語の語りと
ニルスによる語りとが入り混じることで、スリル感を高めるなど、独特の工夫が
されています。
こんなことも、大人になってから読まないと味わえない部分なので、
改めてこの作品を読んでみてよかったな~、と思いました。
日常生活に疲れた大人だからこそ、これらのシンプルで美しい物語に、
心が洗われる気がするのかもしれません。
みなさんにも、ぜひお勧めします!!