「自分で思い込んでしまっている自己の姿、それがセルフイメージなんです。だからこのセルフイメージを作りかえることによって、誰でもなりたい自分になることができるんです」
世界的な心理学の権威と言われる博士が言った。
「しかし、博士。私はそのセルフイメージを理想の自分として描いているつもりなんですが、上手くいかないのです」
やや責めるような口調で博士に質問すると即座いに博士が答えた。
「それはだな、君自身が”こうありたい、だけど無理なんだ”というセルフイメージを作ってしまっているからだ」
なるほど。自分で無理だと考えてしまっている、そこまでがセルフイメージになってしまっている……わかるけれども……。
「しかし博士、いったいセルフイメージ通りになれた人間っているんですか?」
「いるとも。君の右隣の女性を見てみたまえ」
私の右側にはとてもスレンダーで魅力的な美女がほほ笑みながら座っている。できれば交際を申し込みたい。
「彼女は、見ての通りの絶世の美女だ。しかし彼女は二年前まで屈強の男性だったんじゃぞ」
「え?」
絶句する私。
「君の左隣を見たまえ」
私の左側には小柄な男性が座っている。まさか彼は元彼女?
「彼は三年前まで犬だった」
い、犬? まさか、そんな!
博士は驚いている私の傍まで歩いてきて言った。
「君だってほら、言葉が喋れるところまで変化できているじゃないか。もう少しで君はなりたい人間になれるんだ。無理じゃないってことを信じればね」
博士はにっこり笑いながら私の肩を叩いてさらに言った。
「頑張れ、チンパンくん」
了
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