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第四百二十話_short 異形見聞譚

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 それで、そやつは飛ぶのかね? 訊ねられて旅人が答えた。

飛びませんね。何しろ奴らには羽根などないんですから。では、どうやって移動するのかって? 細い四肢で地を這うんですよ。

 四肢で地を……這う……。

 そうです。あ、いや、ほとんどの者は後ろ足で歩くんですがね。そりゃあその姿ったら気味の悪い……か細い足の節々が折り曲がってね、また気色の悪いことに四肢の先には硬い殻みたいのが生えていて、それがどんどん伸びる。ありゃあ何かの病の痕跡だろうと思うんだな。

 伸びる殻ですか……そりゃ気味悪い。

 気味悪いといえば、もっとぞっとするのは奴らの皮膚です。なんだか肉の塊っていうか、乾いた粘膜みたいになっててね、よくあんな姿で生きてられると思うんだがね、ところどころは繊維状の殻で守られてはいるようなんだが。

 ええ、まぁ、とにかく奇妙な生き物でね、多少の知能はあるようなんですがね。

 美しい惑星から戻ってきた旅人は、鞄から小さな炭素体を取り出して村人たちに見せて言った。

 これはあの星に生きている植物というものさ。これは我々の食物になりそうなんだ。

 旅人は現地ではアップルと呼ばれるそれをテーブルの上に置いてみんなの様子を伺った。

                      了


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