ロジャー・パルバース/著 四方田犬彦/著
出版社名 : 河出書房新社(河出ブックス 077)
出版年月 : 2014年10月
ISBNコード : 978-4-309-62477-8
税込価格 : 1,728円
頁数・縦 : 252p・19cm
ユダヤ人、イスラエルに関して、立体的多面的に縦横に語る対談。
両名とも、反イスラエルである点が面白い。正当なユダヤ人にとって、イスラエルという国家は蛮行でしかいないのだ。国家がなくてもユダヤ人はユダヤ人であり、立派にやっていける。イスラエルという人工的な国家をつくるより、世界的に民族や宗教に対する偏見をなくし、民族・宗教が融合した社会を築くことのほうが重要だということが分かる。
それにしても、ここまで赤裸々に「ユダヤ人」に関して語られることも珍しい。ユダヤ人に対する賞賛も自嘲もある。パルバース氏の、ユダヤ人に対する誇りがそうさせるのか。
【目次】
1 私はユダヤ人としてどう育ったか
ユダヤ人がいることで世界は豊かになった
日本人はユダヤ人を知らない
ほか
2 イスラエルはユダヤ人を代表できるか
戸籍があるのは日本だけ
イスラエル建国はユダヤ人の歴史の曲がり角
ほか
3 ユダヤ人はアメリカにどう受け入れられたか
コメディアンたち
ジョークの真実
ほか
4 言語でも、信仰でも、国籍でもなく、ユダヤ人
アメリカの普遍性
『ドン・キホーテ』
ほか
【著者】
パルバース,ロジャー
1944年ニューヨーク生まれ。ベトナム戦争への批判からアメリカを離れ、76年、オーストラリア国籍を取得。オーストラリア国立大学、東京工業大学などで教える。小説・エッセイの執筆、宮沢賢治、井上ひさしなどの英訳、劇作・演出など多様に活動。野間文芸翻訳賞を受賞。
四方田 犬彦 (ヨモタ イヌヒコ)
1953年大阪生まれ。建国大学(ソウル)、コロンビア大学、ボローニャ大学、明治学院大学、テルアヴィヴ大学などで教える。サントリー学芸賞、伊藤整文学賞、桑原武夫学芸賞、芸術選奨などを受賞。
【抜書】
●感情移入(p42)
パルバース〔自分の苦しみはユニークで「皆さん、見てください。ぼくはこんなにひどい目に遭っている」というのではなくて、自分の苦しみのプリズムを通して、自分の苦しみを横に置いておいて、まず相手の悲しみ、相手の気持ちを考える。それがユダヤ人だなと思う。〕
〔やっぱりユダヤ人は小さいときから、深いところで人と同情するわけです。〕
●帝国(p131)
四方田〔昔はエンパイアといえば帝国主義だから、絶対にそれぞれの民族が独立するのが正しいと思っていましたが、中東のことを考えると、今世界中の多くの問題がここから始まっている。イスラエル、パレスチナ、コソヴォ、ユーゴスラビア、チェチェン、グルジア、イラク、アフガニスタン。ほとんどすべてオットマン帝国ですね。オットマン帝国のときは何も起きなかったんです。〕
〔大きな帝国で多民族でやっているからいいかげんでよかった。「宗教は好きなようにしなさい」と。ところがヨーロッパで民族=国家というネイションステイトという考えが流行し出すと、オットマン帝国が一九一八年くらいに手足を切り離されて、そこからいろいろな厄難が起きた。〕
(2014/12/14)KG
〈この本の詳細〉
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