『ネット社会の「正義」とは何か』 西垣通 2014/09
著者は東京経済大学教授、東大名誉教授。 ネット上の熟議と集合知によって、いかに社会正義を決めるのかという本。
ウェブ2.0で「一億総表現社会」となったが、一般人は公共的な問題に積極的に関っておらず、民主制社会構築のための有効なツールとはなっていない。
(今作られつつある世界は)検索エンジンと自動秩序形成システムによってつくられるもの。機械的計算への過信、人間の主体的判断に対する軽視ではないか。
専門分化が進んだ現代社会では、専門家は狭いタコツボの中で暮らし、発想を相対化することが難しい。そこでアマチュアによる全体論的・包括的な集合知が期待される。裁判員制度も一種の集合知である。
4択クイズで集合知が有効なのは、知識のない人の選択がランダム・均等に分散されることで、結果的に正解にたどり着く。重要なのは集団の多様性。
集合知の有効性は、正解(最適解)がある問題なら期待できるが、客観的評価基準もない問題では、効果は望めない。
政治や経済など、正解のない問題では、単純な集計方法では集団としての意思を把握することはできない。そこで注目するのが批評家・東浩紀による「一般意思2.0」というアイデア。 東による新しい民主主義の具体的な実現形態は「選良と大衆、人間と動物、熟議とデータベース、間接民主主義と無意識民主主義」の組み合わせだという。
本書が提案する公共的問題でのネット集合知の基本的なアプローチは、「自由主義の制約条件を念頭に置きつつ、功利主義の効用関数にもとづいて公共的正義のあり方を検討する」というもの。
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『ネット社会の「正義」とは何か』
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