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バルバラ『赤い橋の殺人』(光文社古典新訳文庫)

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貧乏音楽家のマックスは、久しぶりに再会した知人クレマンの変貌に驚く。今では妻を娶り、別人のように裕福になったクレマンはしかし、ある夜サロンで語られた殺人事件の話題に異様な反応を見せて… バルザックやデュマの重厚な小説からマンシェットみたいな暗黒小説(ロマン・ノワール)にそのまま道が続いているフランス文学の世界は一体どういう作りになっているのかとたまに思ったものですが、この1冊で合点がいきました。 20世紀初頭、誰かがマドレーヌをいただきながら回想したような華やかなパリ社交界の情景から、一転して血なまぐさい隠された犯罪が暴き出されるんですからね。 物語の半分以上は、古典的なフランスの小説らしい細やかな情景描写と読んでるこっちまで不安になる心理描写とほんの少しの幻想味を楽しみました。それが最後の数章、クライマックスの告白シーンで度肝を抜かれまして。ことの真相自体はすぐにピンと来ると思いますけれども、主人公の抱いた疑惑や犯人の心情がじわじわ語られる味わいは、これはもうミステリと呼ぶのに何のためらいもいりませんよ。 赤い橋の殺人 (光文社古典新訳文庫)


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