フィリップ・カー/新潮社/お薦め度 ★★★★☆
ベルリン三部作、第二弾
時は1938年、ユダヤ人迫害がますます強くなるベルリン。ドイツは戦争に一歩近づいていた。
私立探偵グンターは富豪の未亡人から強請事件の依頼を受ける。自分の息子が事件に関係しているのではないか、と。犯人と思しき男を突き止めるが、助手ともども殺されてしまう。
そんななか、前職の刑事警察に半強制的に連れ戻されるグンター。唯一の条件は刑事から警部。指揮をとらされた事件は連続強姦殺人。すでに4人の少女が殺害されていた。
捜査をあざ笑うかのように更に増える被害者。いつしか二つの事件が符号することに・・・
今回も実名の人物、ヒムラーが大きな役割を果たす。事件の解明と時代背景を巧みに操る作者に脱帽!
主人公グンターの心情哲学を示す一節。「ふだんなら、党の広報番組など聴きはしない。自分の屁に耳を傾けているほうがよほどましだ」
追伸:前作で行方不明となったイングの件はもうちょっと頁を割いてほしかった!