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井筒 俊彦訳『コーラン(中)』

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コーラン〈中〉 (岩波文庫)

コーラン〈中〉 (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1964/01
  • メディア: 文庫
上巻を読んでいるときには正直「これ最後まで読まないかもな」と思っていたが、意外にも読み進めている。 というのは、上巻と違ってほかの啓典の民を攻撃しなくなっているからだ。 というより、コーランは新しい順に編纂されているため、時代が下ってほかの宗教に攻撃的になったのが上巻、ということだった。 「言葉や肌の色が異なっているのも、どこのだれが見てもわかる有難い神兆」という一節を読んで複雑な気持ちになった。 しかも、なにか妙にくせになる。 なまじっかな本を併読するとその本があせてしまうのだ。 心弱りしたときに縋る相手がいると、どんなにか安らぐだろうなと感じてしまう。 商人言葉で訳されてあるのは、訳者も悩んだところで、原文は荘厳らしい。 以前バガヴァッド・ギーターの訳で、「自由」に「さとり」と振り仮名をふってあるのに心打たれたが、それに共通する深みと平易さを感じる。 こんな厳しい戒律の宗教が、よく世界中に広まったなと思っていた。 しかし、上巻の注釈によると従来の宗教ではもっと迷信に満ちた風習があり、むしろ規律はイスラム教でゆるんだのかもしれない。 またこれを読んでいる頃代々木上原にあるモスクに行って、少なくとも礼拝は理にかなっていそうだと感じた。 ところで、最後の章「部族同盟」だけ上巻のような雰囲気だ。 しかも、女性関係についてマホメットだけ特別扱いな内容がある。 注釈には、「マホメットは多くの妻妾を抱えていたため、女の章等に照らすと非難されることになるため(このようなお告げが)」とあり、苦笑してしまった。 ガンジーやクリシュナムルティも、「伝記を読むと女性関係に関して自分の言葉を守れていないので有難みが薄れてくるから、読むならその覚悟を」と聞いたことを思い出した。 冗談でないのかも。

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