最近年齢的にも目が疲れてしまうし、全然本を読んでいませんでした。久しぶりに一気に読了。タイトルはこうじん。と読ませるようです。
面白かったです。宮部さんは現代物と歴史物と両方書かれますが、こちらは綱吉の時代の東北が舞台の小説。山で恐ろしい怪物が現れて。。。というお話で、色んな要素がある小説でした。怪物を巡って隣通しの藩の争い、兄妹の人生。歴史小説、ホラー小説でありながら、詳しくは言えませんが、悲しいファンタジーでもあるような。人間のさが、暗い悪しき心の吹き溜まりのようなものを描くことが多い作者らしい小説だなと思いました。でも暗いばかりではなく、同時に、ふんわりとあたたかいもの、にまりとしてしまう面白いスパイスもたくさんあるので、決してどれも暗いお話ではないのがいいところです。
読み進むうちに、あれ?っと思い浮かんだのですが、前に読んだ短編「まぐる笛」と、山の怪物というモチーフについては似ています。けれど、もっとストーリーが広がり、より深くテーマが掘り下げられた感じです。
山に暮らす貧しい人々、農民、庄屋、様々な階級の武士。その奥方。使用人たち。今回は結構登場人物が多く、最初に説明もありました。新聞連載の小説だったというのが、何となくわかりました。
実際に出てくる登場人物だけではなく、話の展開上だけ出てくる人物も多いのですが、巧くキャラクターが書き分けられています。忍び?っぽい、やじという武家の使用人や、たまたま事件に関わることになった流れ者?の宗栄、若い武士、小日向などについては、また新たに別の小説の登場人物として出てきてもおかしくないような感じがしました。それだけ盛りだくさんの感じです。
あと、主要人物ではなかったのですが、百足むかでというスパイの役回りが、なかなか意外な展開で、印象に残りました。
今、宮部さん原作の「ぼんくら」がドラマでやっており、配役もぴったりで、人間味あふれる良いドラマだなと思います。ぼんくらもそうですが、考えれば宮部さんの小説には、主人公の周りにキーパーソンとなる子供の登場人物がいることが多いですね。この小説でも出てくるのですが、その男の子が立ち直っていく過程の心理描写に、う~んと納得でした。
宮部ワールドはまだまだ広がる感じでしょうか。