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スエトニウス著 「ローマ皇帝伝」 (岩波文庫)

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ユリウス・カエサルから、ドミティアヌス帝までのローマ皇帝の業伝が書かれています。 歴史書としての評価はあまり良くないようですが、当時の風俗を知ることができるという意味で、大変興味深い一冊です。夢占いや星占い、吉兆や凶兆に色々と振り回される様子は、遠い昔の皇帝でも私たちでもあまり変わりはないのかもしれませんね。 ユリウス・カエサルがいわゆる「バーコード頭」で、色々と気にしていたことを初めて知りました。「やかん頭」とか呼ばれていたそうです。 カリグラ以降の残虐な皇帝たちの行いは読んでいて胸が痛む内容でした。特にネロは格別です。少年に性転換手術を施して結婚したりとか、まさに「神をも恐れぬ」行いです。なぜこんな残虐な人たちに独裁権を委ねたのかと思わずにはいられませんでした。 自分がネロの立場だったら、と考えてみました。神と崇められる絶対的な権力を持っていて、周りに自分を諌めてくれる人が誰もいない。きっと孤独だったでしょう。孤独の中で、自分への忠義心が見えなくなる。それを試すために残虐な行いを行う。その結果さらに孤独になる。そんな負のスパイラルに巻き込まれてしまっていたのかも知れません。ただ、だからと言ってローマ市街に放火するなどというのはやはり理解できない心理です。元から残虐な性分もあったのでしょう。 オススメ度は、ローマ史に興味があるなら、という条件付きで、★★★★☆というところでしょう。文庫本なので、気軽に読めるのがいいです。スエトニウス独特の、時系列の脈絡がない文章構成が気になる人には気になるかも知れません。


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