「第三の男」 グレアム・グリーン作 小津次郎訳 (ハヤカワepi文庫) 第二次大戦後のウィーンを舞台に、ある小説家が親友の死の謎を追う物語です。 オーソン・ウェルズ主演の映画は、古典的名作としてあまりにも有名です。 2001年にハヤカワepi文庫が創刊されたとき、その1冊目として配本されました。 訳は1979年に出たものですが、分かりやすいです。活字も読みやすいです。
小説家のマーティンズは、親友のライムを訪ねて、ウィーンにやってきました。 しかしその日に、ライムの葬儀が行われていたのです。 ところが、調べていくといくつか不自然なところがあり・・・ そしてしだいに、ライムの本当の姿 が明かされていき・・・ 映画史上の傑作として有名なので、内容を知っている人は多いでしょう。 私は2度見ました。大戦直後の廃墟と化したウィーンが印象的でした。 原作と映画で大きく違うのは、なんといってもラストシーンです。 作者自身が認めるように、ラストは映画の方がずっと良い。原作は甘いです。 しかし、原作でしか味わえない魅力も多い。 例えば、何気ない言葉の中に宿る、グリーン一流の含蓄です。 「仕事が単なる仕事になってしまったという理由で、たくさんの機会や、 洞察のきらめきを失ってしまうのだ。」(P157) 一方、あの有名な「スイスの鳩時計」の名言は、どこを探してもありません。 解説によると、あれ はオーソン・ウェルズの考えたセリフなのだそうです。 この映画は、キネ旬が1999年に行った、外国映画ベスト100の、第1位でした。 今では、気軽にレンタルでき、安く手にも入ります。一見の価値ありです。 ところで、epi文庫シリーズは、良質な海外文学を若者向けに出しています。 グリーンの代表作は全て出ています。特に次の2冊は必読です。
権力と栄光 グレアムグリーンセレクション ハヤカワepi文庫
- 作者: グレアム・グリーン
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/09/08
- メディア: 文庫

事件の核心 (ハヤカワepi文庫―グレアム・グリーン・セレクション)
- 作者: グレアム グリーン
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/12
- メディア: 文庫