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出雲と大和 古代国家の原像をたずねて

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出雲と大和――古代国家の原像をたずねて (岩波新書)

村井康彦/著
出版社名 : 岩波書店(岩波新書 新赤版 1405)
出版年月 : 2013年1月
ISBNコード : 978-4-00-431405-9
税込価格 : 882円
頁数・縦 : 252,10p・18cm
 
 
■邪馬台国は出雲系
 邪馬台国が出雲系の氏族連合によって擁立された王朝であるということを論証。その所在地は奈良盆地であるが、のちの大和朝廷とは繋がらない、別の王朝である。神武東征によって政権が交代したとみる。なぜなら、記紀に「倭の女王」卑弥呼が登場しないからだ。著者は、卑弥呼は大和朝廷の直接の祖先ではないから記紀に「卑弥呼」の記述がないとみなす。
 また、卑弥呼の王宮と目される地域の周辺には、出雲ゆかりの氏族が棲んでいた形跡がある。史料を参照しつつ、神社や地名などにその痕跡を求めつつ、丁寧に証明しており、説得力がある。

【目次】
序章 三輪山幻想
第1章 出雲王国論
第2章 邪馬台国の終焉
第3章 大和王権の確立
第4章 出雲国造―その栄光と挫折
終章 再び惣社へ

【著者】
村井 康彦 (ムライ ヤスヒコ)
 1930年山口県に生まれる。1958年京都大学文学部大学院博士課程修了。専攻は日本古代・中世史。現在、国際日本文化研究センター名誉教授。

【抜書】
●総社(pⅲ)
 総社または惣社。国守(受領)が新任の際に国内の主要な神社を巡拝するのが大事な国務だったが、平安末期になるとその煩を省くため、国衙のそばに神々をまとめて祀るようになった。
 国庁神社……国庁裏神社、府中神社。毎月1日に行われる「朔旦」神事では、一国内の神々が国衙に招かれる。国庁神社にそのための祭壇が用意された。平素は空虚な空間。惣座。惣社は、この惣座が母体となった。
 印鎰(いんやく)社……印鎰=国守の権限の根源である国印を納めた唐櫃を開閉するための鎰(かぎ)。国庁機能が失われた平安末期~鎌倉初期に、国庁のシンボルとしての印鎰を国庁跡地に設けた社祠にまつった。

●磐座祭祀=信仰(p27)
 磐座祭祀=信仰……主として山中で出くわす巨岩奇石に畏怖の念を抱き、これを神の依る岩=磐座とみなして祭祀の対象とする。
 出雲族に顕著な鉱山の開発、とくに鉄生産の仕事と深いかかわりがある。工人たちが鉱脈の探索で山中を巡る間に出会った巨大な岩塊、奇怪な巨石に特別な思いを抱いたことに始まった。

●邪馬台国の四官(p85)
 『魏志倭人伝』。他の国と違い、邪馬台国には「官」が4つ存在していた。
 伊支馬……イコマ、生駒。垂仁天皇の御陵の地。奈良盆地の北から北西の地域。物部氏。
 弥馬升……ミマス。孝昭天皇の御陵の地。奈良西南部の葛城一帯。鴨氏。
 弥馬獲支……ミマキ。崇神天皇の御陵の地。三輪山の麓、天理から桜井にかけて。大神氏。
 奴佳鞮……ナカト、中処。中央部。
 神賀詞(かむよごと)の「近き守神」……三輪の大神神社、葛城の高鴨神社、飛鳥の伽夜奈流美(かやなるみ)神社、宇奈提(うなて)の川俣神社。

●田原本(たわらもと)町(p88)
 邪馬台国の宮都、卑弥呼の王宮は、奈良県田原本町の市街地の下に埋もれている? 「大字なし」という地名があり、ここが中央部・中枢。奈良盆地の中央、平野部の微高地が候補。唐古・鍵遺跡。

●饒速日命、彦火明命(p145)
 饒速日命の本名(?)……天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊。『先代旧事本紀』による。
 饒速日命……物部氏の祖神。
 彦火明……海部(あまべ)氏(丹後国一宮の籠〈この〉神社の祝部)、尾張氏の祖神。
 尾張氏、もともと葛城地方(御所市、高尾張邑)が本拠だった。大和朝廷成立後、新天地を求めて尾張(愛知県)に移った。
 祖神の本名の一部を分有することで、互いに同族意識を共有していた。

●鴨氏(p154)
 味鉏(鋤)高彦根神……大国主神の子。迦毛大御神ともいう(『古事記』)。製鉄の神。火明命と同一神。賀茂別雷神(上賀茂神社)とも同一神。
 全国鴨社の総本社、高鴨神社の神域は、鉱脈の上にある。鴨氏、出雲系で製鉄に関わる集団だった。
 高鴨神社=上鴨社、御歳神社(祭神:高照姫)=中鴨社、鴨都波(かもつば)神社(祭神:事代主命・下照比売命)=下鴨社。
 神武に最後まで抵抗し、木津川をへて山城へ移り、上賀茂神社、下鴨神社を奉祭した。

●葛城氏、蘇我氏(p162)
 葛城氏は、鴨系の一族。武内宿禰を祖とする。葛城の地名は、もともと高尾張邑であった。邪馬台国以来葛城の地を離れず、力を伸ばして4世紀末から5世紀にかけて大和政権の中で頭角を現した。
 蘇我氏も、武内宿禰を祖とする。葛城の地を本拠とし、葛城氏と同族。

●狛犬、社日(p244)
 神社の社殿前の狛犬が、前脚を折り曲げてかがみこみ、後脚はすっと伸ばしてお尻を高く上げていたら、その神社は出雲系。
 社日さま……五角形の石柱。五つの面に大己貴神、少彦名神、天照大神、埴安(はにやす)姫命、倉稲魂(うかのみたま)命の名が刻まれている。これも出雲系の指標。
 社日とは、社=神を祀る春分・秋分に近い戊(つちのえ)の日。この日に五穀豊穣を祈り、収穫を感謝した。

●邪馬台国=出雲系(p249)
 邪馬台国は出雲勢力の建てたクニだった。理由は以下の3つ。
 (1)三輪山……祭神が大物主神。出雲系。
 (2)神賀詞(かむよごと)……貢置を申し出た「皇孫の命の近き守神」が三輪山の大神神社、葛城の高鴨神社など、いずれも出雲系の神々であった。
 (3)『魏志倭人伝』に出てくる倭の女王、邪馬台国の卑弥呼の名が、『古事記』『日本書紀』に全く出てこない。邪馬台国と大和朝廷は連続していない。

(2013/7/30)KG

〈この本の詳細〉
honto: http://honto.jp/netstore/pd-book_25490246.html
e-hon: http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032867868


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