先日、『ヒアアフター(来世)』というマット・デイモンが霊媒師を、セシル・ドゥ・フランスが臨死体験者を演じる映画を見ました。死や死者にとらわれるのではなく現在の生を生きよ、みたいな結論の映画でした。立花隆が臨死体験について網羅的な本を書いていたなぁと思い出して、読んでみましました。
説明するまでもないことですが、「臨死体験」とは、死にかけて生き返った人が、三途の川やお花畑という姿であの世を垣間見る体験です。
1)体外離脱2)トンネルを通って光の世界に至る3)一瞬の間に人生が走馬灯のように甦る4)超越的存在との出会い5)死んだ親族、知人との出会い6)安らぎ7)全知全能にも似た感覚
といった体験が代表的なものです。
『日本霊異記』や『今昔物語』にも多くの記載がある古くから知られた「体験」ですが、オカルトと紙一重のキワモノというのが印象です。本書でも語られていることですが、いくら事例が多くても、体験の「伝聞」ですから証明が不可能であり科学的が取り扱わない領域です。
臨死体験は、酸欠となって血液中の二酸化炭素が増えことで見る幻覚、死に臨んで増加する脳内モルヒネが生み出す幻覚であるなどの「脳内現象説」が有力です。一方、手術等で体外離脱し、その際の体験が、本来患者が知り得ない情報を知り得たり、また臨死体験がパターン化されていることから、これを現実のスピリチュアルな現象であるという主張もあります。
当然に、脳内現象か現実の現象かの決着は突いていませんが、医師のエリザベス・キューブラー=ロスやレイモンド・ムーディの著作によって、この「臨死体験」が不思議な現象として市民権を得つつあるようです。
1991年に、NHKが『立花隆リポート 臨死体験~人は死ぬ時 何を見るのか~』を放映し、日本でも、臨死体験がキワモノから真面目に論議する対象となったようです(私も見ました)。番組では、当たり前ですが結論を持ち越しています。本書はこの番組のために集めた膨大な資料を再編成し、「あの世はあるのか?」という疑問に答えを出そうとしています(でも出ませんね・・・笑)。世の読書人としては、結論はどうあれ、あの立花隆が(最近ではボケてきたという話もあるそうですが)キワモノに挑んでくれたことに拍手です。
何を隠そう、『中核 vs 革マル』以来の結構熱心な読者でしたが、大爆笑の『政治と情念(旧稿『「田中真紀子」研究』)あたりで止めてしまいました。立花隆が「ヒアアフター」にどう立ち向かうのか、です。
さあ、下巻でどうまとめるのか?