* 工学部ヒラノ教授, 今野浩, 新潮社, 9784101251615 東工大の名誉教授による、工学部と工学部教授にまつわる裏話のかずかずをユーモアたっぷりにまとめたもの。いきつけのエキナカ書店に平積みになっていたので購入。 いわゆる暴露本ではなく、自らの体験にもとづいて、工学系大学の組織運営やら、そこに属する人々の悲哀、習性、などなどが軽妙洒脱な文章で語られる。ずっと読み下していって、素直に面白い。北杜夫の著作に通じるものがあるようにも思える。 中盤に紹介される「工学部の教え7か条」がなかなか面白い。エンジニアに属する仕事をやっているとなるほどと思えるものばかりだ。いわく、納期厳守、専門外のことに口出ししない、頼まれたことは断るな、他人の話は最後まで聞く、など。ある意味、当たり前のことばかりだが、著者によれば世の中の一部の人種はこのあたりの感覚が違うのでエンジニアと話がかみ合わない、と嘆く。(著者は政治家あたりが嫌いのようだ。) 文科省による「大学改革」の行く末を案じつつ著者は筆をおくのだが、確かにこんなんで今後の日本の高等教育は大丈夫なのか。高度成長期とは工学のおかれる立場が変わっているとはいえ、日本の特殊性を考えるとそれなしではやっていけないのでは、というわけだ。結果が出るのは20年後、果たして。
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