(あらすじ)
(感想)
最近は、買ったまま積んで置いた本を積極的に読むようにしています。そんな中、手をつけたのがこの作品。
『このライトノベルがすごい!2012』第10位、『みんなで選ぶベストライトノベル2011』感動部門第1位受賞、『SFが読みたい!2012年版』ライトノベルSF部門ベスト10、『第一回ラノベ好き書店員大賞』第3位。 (Wikipediaより)
と数々の賞を受賞して、昨年話題になっていた作品です。発売当初から評判もよく、いつか読もうと思っていた作品ですが、読み終わってみると、噂に違わぬ、良い作品だったと思います。
面白さの要因として、作品にテーマが貫かれていることが挙げられると思います。そのテーマは「生きる」ということ。作品中でも、
「あの、『生きる』って……どういうことでしょうカ?」(P.142)
と書かれています。そして、この一冊でこのテーマを考えさせ、感じさせてくれる作品だったと思います。だからこそ、感動部門で第1位を取ることが出来たのだろうと思います。
個人的にこの作品でおもしろいと思ったのは、その登場人物でした。「生きる」をテーマにしている本作ですが、そのメインとなる登場人物は、ロボットです。優しい主人と幸せな生活を送っていながら、とある事故をきっかけとして過酷な運命に巻き込まれることになる主人公・アイリス。そのアイリスが出会うことになるリリスとボロコフという二人のロボット。この三人(体)の交流を通して、「生きる」という事を問いかけてきます。
話を見ていくと、「生きる」をテーマにしたことで、あまりにロボットが人間くさすぎると感じるところも確かにありました。しかし、物語の展開を考えると人間でも問題が無かったところを、あえてロボットを主人公にして物語を描いたことに、作者の挑戦があったように思います。最後の方になると、主人公がロボットであったことを忘れてしまいそうなところもありますが。しかし、ロボットだからこそ、「人間である読者はどうだい?」と問いかける構成でもあったのかな、と思えなくもありません。
願いの末にアイリスが手に入れたもの。ラストで綴られる手紙は、とても幸せに溢れたもので、清々しいラストになっていたように思います。そして、その感動をさらに際立たせるのは表紙。表紙が、さながら思い出のポートレート写真のように、それまでの物語を想起させてくれました。
この作品。第17回電撃小説大賞4次選考作ということです。ちなみに、このときの銀賞に『はたらく魔王さま!』があります。そこで最終選考に残らなかった、ということですが、これは作品が「あまりライトノベル的ではない」という評価だったのかな、という気がします。或いは作品が全体的に暗い、という評価だったのかも知れません。そんな感じで、所謂「ライトノベル」的なキャラのノリやギャグなどを求める人にはあまりおすすめは出来ないかも知れません。ただし、純粋な物語の面白さとしては、良質な物語だと思います。素晴らしい物語を読みたい人にはもちろん、ライトノベルに固定観念がある人にこそ、読んで欲しい作品かも知れません。